※追加更新終了【短編集】恋人になってくれませんか?
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(最近、なんだか体調が悪いな)


 バッカスはズキズキと痛む頭を抱えつつ、小さくため息を吐いた。不調の理由について、心当たりは一つもない。まだ若いし、身体はしっかりと鍛えている。これまで風邪一つ引いたことないというのに、妙だと思っていた。


(そうだ……シンシアのせいだ。シンシアが口煩くなった頃からこの頭痛が始まったんだ)


 バッカスは眉間に皺を寄せ、ぐっと歯を喰いしばる。
 思い返せば自身の不調は、シンシアがバッカスとジュノーの関係を指摘しようとしたあの日から始まった。その日のシンシアは、珍しく顔を強張らせ『話がある』と口にした。言われるのはどうせ、いつもと同じ小言。ならば耳を傾ける時間が勿体ない。


『皆まで言うな』


 それはシンシアに対するバッカスの口癖だった。そうして彼女の言葉を遮ると、シンシアは少しだけ目を丸くし、それからすぐに押し黙る。それが二人の、お決まりのやり取りになっていた。
 けれど、その次の日も、そのまた次の日も、シンシアは『話がある』とバッカスの元を訪れた。


(鬱陶しい)


 シンシアのことは可愛らしく、心優しい娘だと思う。けれど、他の娘たちがひたすらバッカスを褒めそやし、崇拝するにもかかわらず、シンシアだけはそうしない。それどころか、時に彼の行動を咎め小言を口にするものだから、煩わしく感じてしまうのだ。
 そういうわけで、バッカスは何かと理由を付けては、シンシアとの接触を避けてきた。そうして既にひと月近くシンシアとまともに会話をしていない。
 バッカスは、彼の不調の理由はきっと、シンシアの苦言によるストレスなのだろうと結論付けた。


「バッカス」


 その時、馴染みの声がバッカスを呼んだ。


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