※追加更新終了【短編集】恋人になってくれませんか?
***
(最近、なんだか体調が悪いな)
バッカスはズキズキと痛む頭を抱えつつ、小さくため息を吐いた。不調の理由について、心当たりは一つもない。まだ若いし、身体はしっかりと鍛えている。これまで風邪一つ引いたことないというのに、妙だと思っていた。
(そうだ……シンシアのせいだ。シンシアが口煩くなった頃からこの頭痛が始まったんだ)
バッカスは眉間に皺を寄せ、ぐっと歯を喰いしばる。
思い返せば自身の不調は、シンシアがバッカスとジュノーの関係を指摘しようとしたあの日から始まった。その日のシンシアは、珍しく顔を強張らせ『話がある』と口にした。言われるのはどうせ、いつもと同じ小言。ならば耳を傾ける時間が勿体ない。
『皆まで言うな』
それはシンシアに対するバッカスの口癖だった。そうして彼女の言葉を遮ると、シンシアは少しだけ目を丸くし、それからすぐに押し黙る。それが二人の、お決まりのやり取りになっていた。
けれど、その次の日も、そのまた次の日も、シンシアは『話がある』とバッカスの元を訪れた。
(鬱陶しい)
シンシアのことは可愛らしく、心優しい娘だと思う。けれど、他の娘たちがひたすらバッカスを褒めそやし、崇拝するにもかかわらず、シンシアだけはそうしない。それどころか、時に彼の行動を咎め小言を口にするものだから、煩わしく感じてしまうのだ。
そういうわけで、バッカスは何かと理由を付けては、シンシアとの接触を避けてきた。そうして既にひと月近くシンシアとまともに会話をしていない。
バッカスは、彼の不調の理由はきっと、シンシアの苦言によるストレスなのだろうと結論付けた。
「バッカス」
その時、馴染みの声がバッカスを呼んだ。
(最近、なんだか体調が悪いな)
バッカスはズキズキと痛む頭を抱えつつ、小さくため息を吐いた。不調の理由について、心当たりは一つもない。まだ若いし、身体はしっかりと鍛えている。これまで風邪一つ引いたことないというのに、妙だと思っていた。
(そうだ……シンシアのせいだ。シンシアが口煩くなった頃からこの頭痛が始まったんだ)
バッカスは眉間に皺を寄せ、ぐっと歯を喰いしばる。
思い返せば自身の不調は、シンシアがバッカスとジュノーの関係を指摘しようとしたあの日から始まった。その日のシンシアは、珍しく顔を強張らせ『話がある』と口にした。言われるのはどうせ、いつもと同じ小言。ならば耳を傾ける時間が勿体ない。
『皆まで言うな』
それはシンシアに対するバッカスの口癖だった。そうして彼女の言葉を遮ると、シンシアは少しだけ目を丸くし、それからすぐに押し黙る。それが二人の、お決まりのやり取りになっていた。
けれど、その次の日も、そのまた次の日も、シンシアは『話がある』とバッカスの元を訪れた。
(鬱陶しい)
シンシアのことは可愛らしく、心優しい娘だと思う。けれど、他の娘たちがひたすらバッカスを褒めそやし、崇拝するにもかかわらず、シンシアだけはそうしない。それどころか、時に彼の行動を咎め小言を口にするものだから、煩わしく感じてしまうのだ。
そういうわけで、バッカスは何かと理由を付けては、シンシアとの接触を避けてきた。そうして既にひと月近くシンシアとまともに会話をしていない。
バッカスは、彼の不調の理由はきっと、シンシアの苦言によるストレスなのだろうと結論付けた。
「バッカス」
その時、馴染みの声がバッカスを呼んだ。