※追加更新終了【短編集】恋人になってくれませんか?
(申し訳ないな……)
直接耳に届かずとも、周りがどんな風に思っているのか、キーテは敏感に感じ取っている。頻繁に体調を崩す彼女に、まともな縁談など期待できない。伯爵家のお荷物令嬢――――本当ならば軽んじられて当然なのに、デルミーラがいつも献身的に接してくれるお陰で、屋敷でも肩身の狭い思いはしていない。キーテは姉に、とても感謝していた。
「お気になさる必要はございません」
思わぬセリフに、キーテはゆっくりと顔を上げる。
「失礼。俺はエルベアト・べーヴェルと申します。本日は我が家にお越し下さり、ありがとうございます」
クリアになった視界に、精悍な顔立ちの若い男性が映った。先程キーテに声を掛けてくれたのは彼らしい。凛々しく鋭い瞳を和ませ、エルベアトは穏やかな笑みを浮かべる。
「まぁ……! あなたがエルベアト様でしたの。お噂はかねがねお聞きしております。こちらこそ、本日はお招きいただき、光栄ですわ」
エルベアトはべーヴェル侯爵家の三男で、王宮に仕える若き騎士だ。優れた剣技と判断力から、将来を渇望されている。未だ独身で、婚約者も居ない。今夜の夜会は、彼の結婚相手を探すために開かれたものだと、この場に招かれた令嬢たち皆が知っていた。
「わたくしはデルミーラ・ヒエロニムスと申します。
この度は妹のことを気に掛けていただき、ありがとうございました。姉として、心からお礼を申し上げます」
デルミーラが恭しく頭を下げる。
直接耳に届かずとも、周りがどんな風に思っているのか、キーテは敏感に感じ取っている。頻繁に体調を崩す彼女に、まともな縁談など期待できない。伯爵家のお荷物令嬢――――本当ならば軽んじられて当然なのに、デルミーラがいつも献身的に接してくれるお陰で、屋敷でも肩身の狭い思いはしていない。キーテは姉に、とても感謝していた。
「お気になさる必要はございません」
思わぬセリフに、キーテはゆっくりと顔を上げる。
「失礼。俺はエルベアト・べーヴェルと申します。本日は我が家にお越し下さり、ありがとうございます」
クリアになった視界に、精悍な顔立ちの若い男性が映った。先程キーテに声を掛けてくれたのは彼らしい。凛々しく鋭い瞳を和ませ、エルベアトは穏やかな笑みを浮かべる。
「まぁ……! あなたがエルベアト様でしたの。お噂はかねがねお聞きしております。こちらこそ、本日はお招きいただき、光栄ですわ」
エルベアトはべーヴェル侯爵家の三男で、王宮に仕える若き騎士だ。優れた剣技と判断力から、将来を渇望されている。未だ独身で、婚約者も居ない。今夜の夜会は、彼の結婚相手を探すために開かれたものだと、この場に招かれた令嬢たち皆が知っていた。
「わたくしはデルミーラ・ヒエロニムスと申します。
この度は妹のことを気に掛けていただき、ありがとうございました。姉として、心からお礼を申し上げます」
デルミーラが恭しく頭を下げる。