※追加更新終了【短編集】恋人になってくれませんか?
デルミーラは顔面蒼白のまま、首を横に振っていた。思わぬ事の真相に、ヒエロニムス伯爵をはじめとした周囲は、完全に言葉を失っている。
「出せ」
「へ……?」
「持っているんだろう? クイニン石を! 早く、出せ!」
クイニン石は、マルアリア原石と対になる石だ。中毒状態を緩和し、解消へと導く力がある。
これまでキーテが体調を崩しつつ、すぐに回復をしていたのは、デルミーラがクイニン石を持っているからに違いない。
「こ……これ…………これよ」
デルミーラはおずおずと左手を広げる。白い小さな石がそこにあった。すぐさまその石を引っ手繰り、キーテの手のひらに握らせる。
「ん……」
キーテが苦し気な唸り声を上げる。けれど次の瞬間、ゆっくり、ゆっくりと彼女の顔に生気が戻っていくのが分かった。
「キーテ!」
「キーテ様!」
目に見えた回復を見せるキーテに、皆が歓喜の涙を浮かべる。
ただ一人――――デルミーラだけが、まるで抜け殻になったかのような表情で、その場に屈み込んでいた。
「出せ」
「へ……?」
「持っているんだろう? クイニン石を! 早く、出せ!」
クイニン石は、マルアリア原石と対になる石だ。中毒状態を緩和し、解消へと導く力がある。
これまでキーテが体調を崩しつつ、すぐに回復をしていたのは、デルミーラがクイニン石を持っているからに違いない。
「こ……これ…………これよ」
デルミーラはおずおずと左手を広げる。白い小さな石がそこにあった。すぐさまその石を引っ手繰り、キーテの手のひらに握らせる。
「ん……」
キーテが苦し気な唸り声を上げる。けれど次の瞬間、ゆっくり、ゆっくりと彼女の顔に生気が戻っていくのが分かった。
「キーテ!」
「キーテ様!」
目に見えた回復を見せるキーテに、皆が歓喜の涙を浮かべる。
ただ一人――――デルミーラだけが、まるで抜け殻になったかのような表情で、その場に屈み込んでいた。