※追加更新終了【短編集】恋人になってくれませんか?
「もしかして、花はお嫌いですか?」


 気づけば目の前にハルリーが居た。人を疑うことのない純粋無垢な瞳。小さく首を傾げ、アンブラの顔を見上げている。


「それは――――――」


 花ではなく、おまえのことが嫌いなのだ――――そう口にすれば、いくら悪意に疎いハルリーであっても、深く深く傷つくだろう。アンブラを避けるようになり、やがて嫌いになるだろう。

 そうと分かっているのに、アンブラの唇は動かない。愛することは無い、と言いながら、強く拒絶することもできずにいる。中途半端な己を呪いつつ、アンブラは奥歯を噛みしめる。


「ほらほら、アンブラ様! そんな顔してたら幸せが逃げちゃいますよ」


 そう言ってハルリーはアンブラの眉間をツンと小突く。次いで花が綻ぶような温かい笑みを浮かべた。

 感情というものは同調する。良い意味でも、悪い意味でも。


(けれど俺は)


 アンブラは、静かに首を横に振った。


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