※追加更新終了【短編集】恋人になってくれませんか?
(ええ? えぇええええ!?)


 何で? どうしてわたし、抱き締められてるの? 
 どうして? どうして?
 
 っていうか、抱き締められてることも謎だけど、何でわたし馬鹿って言われたの? 全部全部、ソーちゃんを思ってしたことなのに。

 ちっとも訳が分からない。
 だけど、ソーちゃんは何も言わない。

 ソーちゃんの腕の中、彼の香りを強く感じる。こんなに近付くのは、出会って以降初めてのことだ。
 温かくて、逞しいソーちゃんの腕。わたしと違って、男の子なんだなぁって実感して。
 驚きと緊張から、変な汗が流れ落ちる。これ、ソーちゃんに嗅がれたら嫌だな。
 心臓がバクバク鳴り響いているの、絶対気づかれてるし。
 どうしよう? これ、どうしたら良いの?


「そのままで良い」

「……え?」

「ミラはそのままで良いんだ」


 呟くようにソーちゃんが言う。
 わたしは首を横に振った。


「だけど、わたしは変わらなきゃ。今のままじゃ、ソルリヴァイ様に結婚をオーケーして貰えないでしょう? そりゃ、変わったところでダメかもしれないけど、それでも」


 誰だって、少しでも可能性を上げたいって思うじゃない?
 言えばソーちゃんは不服気な表情で、わたしを真っ直ぐに見つめた。


「それは――――」
「それに、わたしだって少しは焦るよ。他の子から結婚を持ちかけられて、ソルリヴァイ様がオーケーしちゃったら嫌だなって思うから。だから」

「しない」


 ソーちゃんが即答する。
 思わぬことに、わたしは目を見開いた。


「本当に? 他の子から結婚を申し込まれても、オーケーしない?」

「うん。ハッキリ断るよ」


 目頭がグッと熱くなる。
 ソーちゃんはこれまで、わたしからの結婚の提案に頷くことは無くとも、完全に否定することもなかった。いつだって次の機会を与えてくれて、わたしは『また来年頑張れば良い』ってそう思えて。


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