※追加更新終了【短編集】恋人になってくれませんか?
***
休暇の間、リヒャルトは公爵邸に滞在することになっている。
明るくて社交的な彼は、使用人達からの人気も高い。細やかな気遣い、労いの言葉、領地から持参した土産の数々。普通なら客人の滞在を厭う使用人達も、寧ろ歓迎ムードに包まれている。
(俺のような愛想のない主人より、本当はあいつのような人間に仕えたいのだろうな)
彼等は皆、生まれ故郷に対する愛着があればこそ、こうしてカドガン家に仕えている。けれど、どうせなら尊敬できる人間の元で働きたいと思っている筈だ。
しかし、アンブラにはそういった感情を、抱かせてやることが出来ない。ハルリーだけではない――――彼等のこともまた、アンブラは愛することが出来ないのだから。
「失礼します、アンブラ様」
書斎の扉が開き、ハルリーがひょこりと顔を覗かせる。
「どうした?」
仕事中に会いに来るのは珍しい。ぶっきら棒な言葉を返せば、ハルリーは穏やかな笑みを浮かべた。
「少し休憩にしませんか? お茶をご一緒いただきたいなぁと思いまして!」
後に控えていた侍女達へ合図をし、ハルリーは部屋の中へと入ってくる。軽く目を見開けば、彼女はニコリと笑みを深めた。
休暇の間、リヒャルトは公爵邸に滞在することになっている。
明るくて社交的な彼は、使用人達からの人気も高い。細やかな気遣い、労いの言葉、領地から持参した土産の数々。普通なら客人の滞在を厭う使用人達も、寧ろ歓迎ムードに包まれている。
(俺のような愛想のない主人より、本当はあいつのような人間に仕えたいのだろうな)
彼等は皆、生まれ故郷に対する愛着があればこそ、こうしてカドガン家に仕えている。けれど、どうせなら尊敬できる人間の元で働きたいと思っている筈だ。
しかし、アンブラにはそういった感情を、抱かせてやることが出来ない。ハルリーだけではない――――彼等のこともまた、アンブラは愛することが出来ないのだから。
「失礼します、アンブラ様」
書斎の扉が開き、ハルリーがひょこりと顔を覗かせる。
「どうした?」
仕事中に会いに来るのは珍しい。ぶっきら棒な言葉を返せば、ハルリーは穏やかな笑みを浮かべた。
「少し休憩にしませんか? お茶をご一緒いただきたいなぁと思いまして!」
後に控えていた侍女達へ合図をし、ハルリーは部屋の中へと入ってくる。軽く目を見開けば、彼女はニコリと笑みを深めた。