※追加更新終了【短編集】恋人になってくれませんか?
 図書館から女子寮まではたったの五分。だけど、二人はその五分間をゆっくりと、大事に歩いて行った。


 寮の前に着いてからも会話が途切れることは無かった。
 互いの好きなモノや講義のこと、クラスメイトや家族のこと、領地や領民、将来の夢等、話題は尽きない。傍から聞けば他愛のないことだが、ノエミにとっては、そのどれもが特別に感じられる。
 一時間後、痺れを切らした寮母がノエミを寮の中に引き入れるまで、二人の会話は続いた。



 次の日も、そのまた次の日も、ジュールは閉館間際に図書館へやって来た。
 ジュールは本を抱えノエミの元へやって来ると、彼女の隣に座り、ごく短いひと時を過ごす。

 そして、閉館してからは、二人で女子寮までの道のりを一緒に歩いた。

 エスコートなんて必要のない平坦で短い道のり。けれど、ジュールはまるで当たり前のように、ノエミへ向かって手を差し出す。
 初めは添えられるだけだった手のひら。けれど、それが次第に、どちらともなく、しっかりと握られるようになっていく。寮に着いて以降も、手を繋いだまま、時間が許す限り会話を続けた。


(こんなに都合の良いことが続いて良いのかな?)


 けれどそれは、偶然で済ませるには、あまりにも出来過ぎている。ノエミはいつだって閉館まで図書館に居るのだし、ジュールはそのことを知っているのだから。


(なんて、そんな風に自分に都合よく勘違いしていた方が、きっと幸せだよね)




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