※追加更新終了【短編集】恋人になってくれませんか?
(待っているだなんて……)


 そんな資格、ノエミにはないと思っていた。
 ジュールを待つことが出来るのは、彼の心に特別な居場所を与えられた誰かだけだ。そしてそれは、ノエミではない。そう必死で自分に言い聞かせてきた。
 だというのに――――。


「ノエミ――――俺がどうして閉館間際の図書館に通うのか、その理由を聞いてくれる?」


 ギュッと繋がれた二人の手のひらが、トクトクとうるさく鼓動を刻む。
 ジュールに見つめられた箇所が熱くて堪らない。まるでそっと撫でられたかのような、口付けされたかのような感覚に、ノエミの心が大きく騒いだ。


「――――聞いても、良いの?」


 そこに理由はあるのだろうか――――ジュールは小さく頷くと、ノエミの頬にそっと触れた。


「俺はノエミの側に居たい。ノエミの隣を他の誰かに奪われたくないんだ」


 ジュールの声音が静かな図書館に木霊する。ノエミは頬を真っ赤に染めつつ、そっと彼から目を逸らした。


「ジュール……それは…………」

「冗談じゃないよ。本気で言ってる」


 そう言ってジュールはノエミのことを覗き込む。


「好きだよ、ノエミ。俺の――――恋人になって欲しい」


 心臓がトクトクと早鐘を打ち、全身が喜びに打ち震える。気づけばノエミは「はい」と頷いていた。


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