※追加更新終了【短編集】恋人になってくれませんか?
「正直俺は焦っているんです。もしもアルバート殿下が、本気でミラを妃にと望めば、さすがの貴方も断ることができない。
そうなったら、俺の想いが叶うことは未来永劫無くなってしまう。その前に、何としても彼女と婚約したいんです!」


 差し迫った表情のソーちゃん。
 どうしてここでアルバート殿下の名前が? と思ったけど、見れば殿下の唇は大きく弧を描いている。彼の性格を鑑みるに、どうやら一芝居打ったらしい。

 本当はわたしと結婚するつもりなんてないのに。ソーちゃんを焚きつけたんだ。

 おまけに殿下はお父様とソーちゃんが毎年このやり取りをしていることを知っていて、わたしをここに連れてきたのだもの。中々の策士だ。


「お願いします! どうかミラと結婚させてください!」

「ダメだ! あの子に結婚はまだ早い! 大体、君なら政略結婚の相手はより取り見取りだろう! ミラじゃなくても良い筈で――――」

「俺は政略結婚がしたい訳じゃありません! ミラだから――――ミラのことが好きだから! 彼女を幸せにしたいから、結婚したいんです!」

「本当に?」


 気づいたら、わたしはそう呟いていた。
 アルバート殿下も、これ以上わたしを止める気はないらしい。部屋の中へと駆け込めば、二人は目を丸くした。


「ミラ! 一体いつからここに……」

「お父様は黙ってて!
ソーちゃん、さっきの言葉、本当? わたしのことが好きだって。わたしだから結婚したいって、本当?」


 尋ねながら、目頭がとても熱くなる。
 ソーちゃんがそんな風に思ってくれていたなんて、全然知らなかった。だって、政略結婚に頷いてくれなかったぐらいだもの。わたしのことなんて、少し仲の良い程度の幼馴染ぐらいの認識だと思っていたのに。


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