※追加更新終了【短編集】恋人になってくれませんか?
***
「まさかこんなことになるとは思わなかったわ」
「こんなことって?」
「この土地に戻ってくることだけは、二度とないって思ってたんだけど」
馬車に揺られつつ、オルニアは小さくため息を吐く。荒れ果てた土地。疲れ切った人々。アダム達王族のせいで苦しんだ人々を癒すため、オルニアは今ここに居る。
今回の一件で、エディーレン王国に隣接した土地の一部――――オルニアが生まれた土地だ――――を、クリスチャンが治めることになった。小さな領地ではあるが、オルニアにとっては、父や母との思い出の詰まった土地である。
「ありがとうございます、殿下」
伝えたいことが多すぎて、上手く言葉に出来ない。けれどクリスチャンは穏やかに微笑み、オルニアを優しく抱き締めた。
「だけどわたし、言いそびれたことが一つあるんです」
「言いそびれたこと? 何だい? 何でも言って。驚きも、幻滅もしないから」
ポンポンと宥める様に背中を撫でられ、オルニアはむず痒さに身を捩る。
口を何度も開いたり閉じたりしながら、ゴクリと大きく唾を呑む。それから、金色に輝くクリスチャンの瞳を真っ直ぐ見つめた。
「わたしが好きなのは――――王子様なんかじゃありません」
オルニアの言葉にクリスチャンが目を瞬く。彼は小さく首を傾げると、オルニアの顔をまじまじと覗き込んだ。
「わたしは、王子様が好きなわけじゃなくて、殿下だから――――クリス様だから好きになったんです! それを、あの時、あのバカに言ってやりたくて…………」
心臓がドキドキと鳴り響く。頬が熱く、真っ赤に染まる。それはオルニアだけじゃなく、クリスチャンも同じだった。
「オルニア――――」
「好きです! わたしは、クリス様のことが大好きです!」
顔から火が出そうな程に恥ずかしい。けれど、こんな自分でも、クリスチャンならば受け入れてくれる。確信を胸に顔を上げれば、彼は今にも泣きだしそうな顔で笑っていて。
「俺も、オルニアが好きだよ!」
二人は顔を見合わせると、互いをきつく抱き締めるのだった。
(END)
「まさかこんなことになるとは思わなかったわ」
「こんなことって?」
「この土地に戻ってくることだけは、二度とないって思ってたんだけど」
馬車に揺られつつ、オルニアは小さくため息を吐く。荒れ果てた土地。疲れ切った人々。アダム達王族のせいで苦しんだ人々を癒すため、オルニアは今ここに居る。
今回の一件で、エディーレン王国に隣接した土地の一部――――オルニアが生まれた土地だ――――を、クリスチャンが治めることになった。小さな領地ではあるが、オルニアにとっては、父や母との思い出の詰まった土地である。
「ありがとうございます、殿下」
伝えたいことが多すぎて、上手く言葉に出来ない。けれどクリスチャンは穏やかに微笑み、オルニアを優しく抱き締めた。
「だけどわたし、言いそびれたことが一つあるんです」
「言いそびれたこと? 何だい? 何でも言って。驚きも、幻滅もしないから」
ポンポンと宥める様に背中を撫でられ、オルニアはむず痒さに身を捩る。
口を何度も開いたり閉じたりしながら、ゴクリと大きく唾を呑む。それから、金色に輝くクリスチャンの瞳を真っ直ぐ見つめた。
「わたしが好きなのは――――王子様なんかじゃありません」
オルニアの言葉にクリスチャンが目を瞬く。彼は小さく首を傾げると、オルニアの顔をまじまじと覗き込んだ。
「わたしは、王子様が好きなわけじゃなくて、殿下だから――――クリス様だから好きになったんです! それを、あの時、あのバカに言ってやりたくて…………」
心臓がドキドキと鳴り響く。頬が熱く、真っ赤に染まる。それはオルニアだけじゃなく、クリスチャンも同じだった。
「オルニア――――」
「好きです! わたしは、クリス様のことが大好きです!」
顔から火が出そうな程に恥ずかしい。けれど、こんな自分でも、クリスチャンならば受け入れてくれる。確信を胸に顔を上げれば、彼は今にも泣きだしそうな顔で笑っていて。
「俺も、オルニアが好きだよ!」
二人は顔を見合わせると、互いをきつく抱き締めるのだった。
(END)