※追加更新終了【短編集】恋人になってくれませんか?
 それから数年後。
 ブリジットの実家であるマルティニ家は、入り婿の度重なる借金により首が回らなくなり。家財を引き払って、地方でひっそりと暮らしている。スカーレットも義母も、さすがに現実を受け入れざるを得ず、これまでの自分を恥じて慎ましく生きているらしい。
 ブリジットはというと。


「お母さま!」


 ヒューゴによく似た可愛い子供達に囲まれ、幸せな気持ちで毎日を過ごしている。守るものができたヒューゴは、これまで以上に仕事にも精を出し、王家の覚えも目出度くなっている。結婚が良い方向に働いた例だと、専らの評判だ。


「ねぇ、ヒューゴ様。わたし、この子達には将来『結婚は幸せなものだ』と思ってもらいたいです」


 ブリジットはそう言って目を細めて笑う。かつての自分のように、愛情を諦めたりせず、現実から目を逸らさずに生きて行って欲しい。


「大丈夫だよ。俺たちなら絶対、大丈夫」


 ヒューゴはブリジットの手を取り、力強くそう口にする。二人は顔を見合わせると、声を上げて笑うのだった。


(END)
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