※追加更新終了【短編集】恋人になってくれませんか?
***
翌日のこと。教室がいつになく騒めいて、わたしはそっと顔を上げた。見れば、教室の入り口に向かってクラスメイトが数人、何やら慌てた様子で駆け寄っている。
「――――シュザンヌ様を呼んでいただきたいの」
すると、人垣の向こうからそんな言葉が聞こえてきた。凛と高く響く、美しい声音だ。
(シュザンヌってわたし……よね?)
思わぬことに戸惑いつつ、わたしは目を丸くする。すぐに一人の令嬢がわたしの元へとやって来て「こちらへ」と促した。躊躇いつつも従えば、人垣がさざ波のように引いていく。その先に待っていた人物に、わたしは小さく息を呑んだ。
「初めまして、シュザンヌ様。わたくしのこと、ご存じかしら?」
そう言って一人の令嬢が美しく微笑む。太陽のような眩いブロンドに、海のように鮮やかな青い瞳。
「シャルレーヌ様……」
口にしつつ、血の気が一気に引いて行った。
「いきなりお呼び立てしてごめんなさいね、ビックリしたでしょう?」
「…………いえ」
何と答えれば良いのか散々迷った挙句、出てきたのはそんな言葉だった。こういう時に、自分の社交性の無さがつくづく恨めしくなる。シャルレーヌ様の顔が見れないまま、わたしはゴクリと唾を呑んだ。
「わたくしのサロンはどう? シュザンヌ様がいらっしゃるのは初めてよね?」
「仰る通り、今回が初めてです。……素敵な場所だと思います」
「そうでしょう? わたくしも気に入っているの。こんな風に誰かと二人きりで使うのは初めてだけど」
わたしが呼び出されたのは、シャルレーヌ様が社交の場として使われている大きな談話室だった。
上品な香水の香りに、美しく飾られた花々。濃紺のティーカップは、繊細かつ美しい模様が描かれた超のつく高級品だ。折角お茶を淹れていただいたものの、先程から緊張で身体が小刻みに震えていて、とてもじゃないけど手に取れそうにない。
翌日のこと。教室がいつになく騒めいて、わたしはそっと顔を上げた。見れば、教室の入り口に向かってクラスメイトが数人、何やら慌てた様子で駆け寄っている。
「――――シュザンヌ様を呼んでいただきたいの」
すると、人垣の向こうからそんな言葉が聞こえてきた。凛と高く響く、美しい声音だ。
(シュザンヌってわたし……よね?)
思わぬことに戸惑いつつ、わたしは目を丸くする。すぐに一人の令嬢がわたしの元へとやって来て「こちらへ」と促した。躊躇いつつも従えば、人垣がさざ波のように引いていく。その先に待っていた人物に、わたしは小さく息を呑んだ。
「初めまして、シュザンヌ様。わたくしのこと、ご存じかしら?」
そう言って一人の令嬢が美しく微笑む。太陽のような眩いブロンドに、海のように鮮やかな青い瞳。
「シャルレーヌ様……」
口にしつつ、血の気が一気に引いて行った。
「いきなりお呼び立てしてごめんなさいね、ビックリしたでしょう?」
「…………いえ」
何と答えれば良いのか散々迷った挙句、出てきたのはそんな言葉だった。こういう時に、自分の社交性の無さがつくづく恨めしくなる。シャルレーヌ様の顔が見れないまま、わたしはゴクリと唾を呑んだ。
「わたくしのサロンはどう? シュザンヌ様がいらっしゃるのは初めてよね?」
「仰る通り、今回が初めてです。……素敵な場所だと思います」
「そうでしょう? わたくしも気に入っているの。こんな風に誰かと二人きりで使うのは初めてだけど」
わたしが呼び出されたのは、シャルレーヌ様が社交の場として使われている大きな談話室だった。
上品な香水の香りに、美しく飾られた花々。濃紺のティーカップは、繊細かつ美しい模様が描かれた超のつく高級品だ。折角お茶を淹れていただいたものの、先程から緊張で身体が小刻みに震えていて、とてもじゃないけど手に取れそうにない。