※追加更新終了【短編集】恋人になってくれませんか?
「シュザンヌ様……そのまま――――幾つかお話を聞かせていただけますか?」

「はい……もちろんです」


 もう逃げも隠れもしない。そう腹を括って、わたしは更に頭を下げた。


「シュザンヌ様はわたくしと――――アントワーヌの件を何もご存じなかったのね?」

「……はい。社交に疎く、お二人が婚約されていることすら存じ上げませんでした。本当にすみません」


 シャルレーヌ様は学園の中心人物だもの。わたしがそういう事情を知らないことだって、彼女のプライドを傷つけかねない。重ね重ね謝罪をしつつ、わたしはグッと唇を噛んだ。


「いいえ……婚約のことはあまり表に出さないようにしていたから、知らなくて当然なのよ?
それにしても、アントワーヌはあなたに何も、事情をお話ししなかったの?」

「それは……はい。色々とお話をさせていただいたのですが、婚約のお話は一度も。
ですが、それは聞かなかったわたしが悪いんです! 婚約者がいらっしゃることなんて、簡単に予想できた筈なのに、自分に都合の良いように考えたから――――」

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