※追加更新終了【短編集】恋人になってくれませんか?
「あっ…………」
「…………」
唐突に二人きりにされ、アントワーヌ様とわたしは、しばらくの間、無言で互いを見つめ合っていた。一体なにから話せば良いのか、皆目見当もつかない。心臓がトクトクと鳴り響く。最早どちらの心臓の音なのか、わたしには分からなくなっていた。
「――――シュザンヌに伝えたいことがあるんだ」
アントワーヌ様はそう言って、ほんのりと頬を赤らめた。ゆっくりと恭しくわたしの手が握られる。コクリと小さく頷きつつ、わたしはアントワーヌ様を見上げる。
(――――本当に良いのだろうか)
声を聞きたいと思うことも、会いたいと願うことも、許されないと思っていた。忘れなければならない、諦めなければならないと、自分に必死で言い聞かせてきた。だけど――――。
「僕はシュザンヌのことが好きだ。君とこの先の人生を一緒に歩みたいと思っている」
そう言ってアントワーヌ様は切なげに目を細める。心がどうしようもない程に温かく震えた。
「わたしも、アントワーヌ様のことが好きです」
もう彼への想いを抑える必要はないんだ――――そう思うと、涙がポロポロと零れ落ちる。アントワーヌ様はわたしの涙を拭いつつ、至極穏やかに微笑んだのだった。
(END)
「…………」
唐突に二人きりにされ、アントワーヌ様とわたしは、しばらくの間、無言で互いを見つめ合っていた。一体なにから話せば良いのか、皆目見当もつかない。心臓がトクトクと鳴り響く。最早どちらの心臓の音なのか、わたしには分からなくなっていた。
「――――シュザンヌに伝えたいことがあるんだ」
アントワーヌ様はそう言って、ほんのりと頬を赤らめた。ゆっくりと恭しくわたしの手が握られる。コクリと小さく頷きつつ、わたしはアントワーヌ様を見上げる。
(――――本当に良いのだろうか)
声を聞きたいと思うことも、会いたいと願うことも、許されないと思っていた。忘れなければならない、諦めなければならないと、自分に必死で言い聞かせてきた。だけど――――。
「僕はシュザンヌのことが好きだ。君とこの先の人生を一緒に歩みたいと思っている」
そう言ってアントワーヌ様は切なげに目を細める。心がどうしようもない程に温かく震えた。
「わたしも、アントワーヌ様のことが好きです」
もう彼への想いを抑える必要はないんだ――――そう思うと、涙がポロポロと零れ落ちる。アントワーヌ様はわたしの涙を拭いつつ、至極穏やかに微笑んだのだった。
(END)