※追加更新終了【短編集】恋人になってくれませんか?
「――――まだ、あいつが忘れられない?」


 背中がほんのりと温かい。心臓がトクンと高鳴るのを感じながら、エリザベスはアーノルドにそっと身体を預けた。


「忘れてほしいの?」


 アーノルドとはそれこそ生まれたころからの付き合いで、兄妹のように育ってきた。
 けれど、クロノスとの婚約破棄が成立し、エリザベスが王位継承に向けて動くにつれ、二人の関係は少しずつ変化してきている。兄妹としての親愛の情ではない何かが、着々と育っているのだ。

 返事の代わりにと、アーノルドは真っ直ぐにエリザベスを見つめる。揺ら揺らと揺れ動く瞳はとても真摯で、エリザベスは思わず微笑んだ。


「大丈夫。私にはアーノルドしかいないから」


 ギュッと力を込めて、アーノルドを抱き締めると、エリザベスの心が温かく灯る。
 優しくて誠実でエリザベスだけを想ってくれる人。アーノルドが夫になってくれたら、きっとエリザベスだけではなく、国民だって幸せにできるだろう。
 眼下に広がる王都の光を眺めながら、二人はそっと、初めての口付けを交わしたのだった。


(END)
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