※追加更新終了【短編集】恋人になってくれませんか?
「ここがノナの部屋だ」
そう言って男性は、ノナをソファの上へと下ろした。温かな色合いの調度類に囲まれた、とても広い部屋だ。大きな窓からは庭園に咲き誇る花々を楽しむことが出来るし、柔らかな陽光が燦々と降り注ぐ。実家では日の射さない奥まった小さな部屋を宛がわれていたのだから、その差は歴然である。
「あの……わたくしまだ、自分が置かれた状況がよく吞み込めていないのですが…………」
躊躇いがちに、ノナはそう口にする。
男性はノナの隣に腰掛けると、彼女の手をゆっくりと包み込んだ。冷たいが、大きな手のひらだ。ノナはひっそりと息を呑みつつ、男性のことをおずおずと見上げる。宝石のような美しい瞳が、真っ直ぐにノナを見つめていた。
「ノナ――――君は私の運命の女なんだ」
男性はゆっくりと、噛みしめるようにそう口にする。ノナは思わず数回、目を瞬いた。
(運命……?)
怪訝な表情のノナに、男性はふっと柔らかな笑みを浮かべる。
「私はエーリヴァーガル。君達の言葉を借りれば『竜』という生き物になる」
「竜……でございますか」
ノナはほぅと息を呑みつつ、目の前の男性をまじまじと見つめた。
人外の生き物だろうという予想はしていたが、龍とは思わなかった。神様、という言葉の方が寧ろしっくりと来る。
「どうかエーリと……気軽にそう呼んで欲しい。私は君の、夫になるのだから」
そう言ってエーリは縋るような表情を浮かべた。ノナは目を丸くしつつ、ほんのりと首を傾げる。
(良いのでしょうか? わたくし、明日には入内する身でしたのに…………)
言葉にするか迷いつつ、けれど己の胸の内に留めて、ノナは小さく頷いた。
そう言って男性は、ノナをソファの上へと下ろした。温かな色合いの調度類に囲まれた、とても広い部屋だ。大きな窓からは庭園に咲き誇る花々を楽しむことが出来るし、柔らかな陽光が燦々と降り注ぐ。実家では日の射さない奥まった小さな部屋を宛がわれていたのだから、その差は歴然である。
「あの……わたくしまだ、自分が置かれた状況がよく吞み込めていないのですが…………」
躊躇いがちに、ノナはそう口にする。
男性はノナの隣に腰掛けると、彼女の手をゆっくりと包み込んだ。冷たいが、大きな手のひらだ。ノナはひっそりと息を呑みつつ、男性のことをおずおずと見上げる。宝石のような美しい瞳が、真っ直ぐにノナを見つめていた。
「ノナ――――君は私の運命の女なんだ」
男性はゆっくりと、噛みしめるようにそう口にする。ノナは思わず数回、目を瞬いた。
(運命……?)
怪訝な表情のノナに、男性はふっと柔らかな笑みを浮かべる。
「私はエーリヴァーガル。君達の言葉を借りれば『竜』という生き物になる」
「竜……でございますか」
ノナはほぅと息を呑みつつ、目の前の男性をまじまじと見つめた。
人外の生き物だろうという予想はしていたが、龍とは思わなかった。神様、という言葉の方が寧ろしっくりと来る。
「どうかエーリと……気軽にそう呼んで欲しい。私は君の、夫になるのだから」
そう言ってエーリは縋るような表情を浮かべた。ノナは目を丸くしつつ、ほんのりと首を傾げる。
(良いのでしょうか? わたくし、明日には入内する身でしたのに…………)
言葉にするか迷いつつ、けれど己の胸の内に留めて、ノナは小さく頷いた。