※追加更新終了【短編集】恋人になってくれませんか?
***


「どうぞ楽になさってください、ノナ様」


 それは、こちらに連れてこられてから三日後のこと。ノナは、エーリの同僚の妻から、お茶会へと招待された。


「本日はお招きいただき、ありがとうございます、パロット様」


 女性は名をパロットと言い、真っ白な翼を背中に持つ、小柄な女性だった。美しい金髪も相まって、まるで天使のように見える。


(わたくしもエーリ様のお側に居たら、あんな風に翼が生えてくるのかしら?)


 そんなことを考えながらパロットを見ていると、彼女はノナの考えていることが分かったようだ。ふふ、と小さく笑いながら、ノナの顔を覗き込んだ。


「残念ですが、ノナ様には翼は生えてきませんわ。私は元々、鳥でございますから。この翼はその名残なのです」


 そう言ってパロットは朗らかに笑う。ノナは小さく息を呑みつつ、両手を合わせた。


「鳥……でございますか?」

「ええ。ビックリしましたでしょう? けれど、それが事実なのです」


 本人が言う通り、俄かには信じられない話だ。パロットはノナと同じ言語を話すし、見た目だって翼以外は人間のそれと同じである。パロットの方からノナがどう見えているかは分からないが、何とも不思議な現象であることには変わりなかった。


「私もね? ある日突然、旦那様にこちらの世界へ連れてこられたのです。私は旦那様の『番』だから、ってね」

「番?」


 首を傾げるノナに、パロットはコクリと頷く。


「竜という生き物には、運命に定められた『番』というものが生涯に一人だけ存在するのだそうです。番とは即ち己の半身。それは竜同士であったり、私のように鳥や犬猫と言った獣、魚、ノナ様のような人間であったりと、実に様々で。本能として身体に組み込まれたものですから、相手がどんな生き物、態様であっても、愛さずには居られないそうですよ?」

「そう、なのですね……」


 これまた何とも信じがたい話だ。ノナは大きく目を見開いた。


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