※追加更新終了【短編集】恋人になってくれませんか?
***


「こちらでの生活には慣れてきた?」


 それは、その日の夜のこと。仕事を終えて戻って来たエーリが、穏やかな笑みを浮かべてそう尋ねた。


「はい。皆さまとても良くしてくださいますし、楽しいです」


 エーリはノナを手招きすると、自分の隣へと座らせる。そのままギュッと肩を抱き、身体を添わせた。


「――――私との関係は?」


 その瞬間、ノナの心臓がドクンと大きく跳ねた。
 ノナはまだ、正式にエーリの妻となったわけではない。突然異世界に連れてこられ、気持ちの整理が付いていないだろうからと、エーリが配慮をしてくれたのだ。


「どう……なのでしょう?」


 慣れたか慣れていないかで言えば、まだ慣れていないという言葉がしっくりくる。エーリの言葉や行動、ちょっとした触れ合いに、いちいちドキドキしてしまっているからだ。
 けれどノナには、それが愛情から来るものなのか、未だハッキリとは口に出来ない。辛い時に手を差し伸べられ、気持ちが救われたのは確かだが、それを愛と呼ぶのはエーリに対して失礼な気がしていた。


(それに…………)

「早くノナを私の妻にしたい」


 そう言ってエーリはノナを後から抱き締める。肩口に唇を寄せられて、ノナの背筋がゾクゾクと震えた。


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