※追加更新終了【短編集】恋人になってくれませんか?
***
「すまなかったね……やはり君をあちらへ連れて行くべきではなかった」
涙を流し続けるノナに、エーリは申し訳なさそうに顔を歪める。けれどノナはフルフルと首を横に振った。
「いいえ、エーリ様。これで良かったのです」
咲き誇る花園の中、二人は互いをきつく抱き締めあう。エーリは恐る恐るといった様子でノナを覗き込むと、縋るような表情を浮かべた。きっと番同士なら、こんな表情をさせることなどない。互いを求めて止まない――――そういうものだからだ。
けれど、そうと分かっていて、エーリはノナを選んだ。約束されたものが何一つないというのに、それでも感情を――――ノナへの想いを優先したのだ。
「エーリ様。わたくしはあなたの運命の女ではございません。けれどわたくしは……あなたのお側に居たい」
ノナから伸びる運命の糸は、初めからエーリへと繋がっていたわけではない。けれど、エーリが二人を結び付けた。たとえ運命に裏付けされていなくとも、二人が強く望むならば、それは強固な絆となり、未来永劫二人を離しはしないだろう。
「側に居てくれ、ノナ。私は君のことが、好きで堪らないんだ」
美しい瞳に熱情を滲ませて、エーリはノナをまじまじと見つめる。頬を撫で、切なげに眉を寄せたエーリは、先程ベルを求めていたエーリよりも余程、切羽詰まって見える。
「……嬉しいです。運命の女だと言われた時より、何倍も」
誰からも選ばれないと思っていた――――そんなノナを、与えられた運命に抗ってまでエーリは選んだ。ノナはそのことが、堪らく嬉しい。
二人はゆっくりと、愛し気に額を寄せ合う。
「ノナ――――私の妻になってくれるかい?」
エーリの両手がノナの頬を優しく包み込む。「はい!」と力強く答えつつ、二人は満面の笑みを浮かべるのだった。
(END)
「すまなかったね……やはり君をあちらへ連れて行くべきではなかった」
涙を流し続けるノナに、エーリは申し訳なさそうに顔を歪める。けれどノナはフルフルと首を横に振った。
「いいえ、エーリ様。これで良かったのです」
咲き誇る花園の中、二人は互いをきつく抱き締めあう。エーリは恐る恐るといった様子でノナを覗き込むと、縋るような表情を浮かべた。きっと番同士なら、こんな表情をさせることなどない。互いを求めて止まない――――そういうものだからだ。
けれど、そうと分かっていて、エーリはノナを選んだ。約束されたものが何一つないというのに、それでも感情を――――ノナへの想いを優先したのだ。
「エーリ様。わたくしはあなたの運命の女ではございません。けれどわたくしは……あなたのお側に居たい」
ノナから伸びる運命の糸は、初めからエーリへと繋がっていたわけではない。けれど、エーリが二人を結び付けた。たとえ運命に裏付けされていなくとも、二人が強く望むならば、それは強固な絆となり、未来永劫二人を離しはしないだろう。
「側に居てくれ、ノナ。私は君のことが、好きで堪らないんだ」
美しい瞳に熱情を滲ませて、エーリはノナをまじまじと見つめる。頬を撫で、切なげに眉を寄せたエーリは、先程ベルを求めていたエーリよりも余程、切羽詰まって見える。
「……嬉しいです。運命の女だと言われた時より、何倍も」
誰からも選ばれないと思っていた――――そんなノナを、与えられた運命に抗ってまでエーリは選んだ。ノナはそのことが、堪らく嬉しい。
二人はゆっくりと、愛し気に額を寄せ合う。
「ノナ――――私の妻になってくれるかい?」
エーリの両手がノナの頬を優しく包み込む。「はい!」と力強く答えつつ、二人は満面の笑みを浮かべるのだった。
(END)