※追加更新終了【短編集】恋人になってくれませんか?
「ああ、エーファ」
そう言って目配せをすれば、エーファはほんのりと下を向く。
エーファ・キャラハン侯爵令嬢――――僕の最愛の婚約者だ。
太陽の如く輝く、美しく柔らかな髪に、エメラルドのように透き通った緑色の大きな瞳。真っ白な肌、薔薇色の頬、理知的な眉に、非の打ちどころが無い程整った目鼻立ち。上品で控えめで、小柄だけれどそこはかとなく漂う色香。
こんな女性、世界広しと言えども他には存在しない。僕は口の端を綻ばせた。
「わたくし、席を外した方が良いのではないでしょうか?」
エーファはそう言って、ほんのりと首を傾げる。彼女の視線の先には僕へ絡みついたままのミランダが居た。
「どうしてそう思うんだい?」
言いながら、僕は眉間に皺を寄せる。
エーファは馬鹿が付くほど真面目で、賢くて、控えめで、場の空気を読める女性だ。彼女はミランダが僕の側にやって来ると、こんな風に遠慮して距離を置こうとする。
(僕の婚約者は他でもない、エーファなのに)
ミランダは僕のことを兄のように慕っている。幼い内に城に連れてこられたから、家族からの愛情に飢えているのだ。年も近く、共に行動することが多い僕を頼りにするのはどうしようもない。
だけど、僕自身がそう思うのと、エーファが思うのとでは話が違う。
エーファはもっとワガママになるべきだ。
自分以外の令嬢が僕に近づくことを嫌だと思っていいし、文句を言って然るべきだし、僕に甘えてくれて良い。寧ろ困らされるぐらいが丁度良いのに、エーファはとにかく聞き分けが良い……というか、本当に自己主張が少ないと思う。
(僕はもっとエーファに甘えられたい)
そう思うからこそ、僕はミランダのワガママを適当に流しているのに、エーファは未だに本心を見せてくれないのだ。
そう言って目配せをすれば、エーファはほんのりと下を向く。
エーファ・キャラハン侯爵令嬢――――僕の最愛の婚約者だ。
太陽の如く輝く、美しく柔らかな髪に、エメラルドのように透き通った緑色の大きな瞳。真っ白な肌、薔薇色の頬、理知的な眉に、非の打ちどころが無い程整った目鼻立ち。上品で控えめで、小柄だけれどそこはかとなく漂う色香。
こんな女性、世界広しと言えども他には存在しない。僕は口の端を綻ばせた。
「わたくし、席を外した方が良いのではないでしょうか?」
エーファはそう言って、ほんのりと首を傾げる。彼女の視線の先には僕へ絡みついたままのミランダが居た。
「どうしてそう思うんだい?」
言いながら、僕は眉間に皺を寄せる。
エーファは馬鹿が付くほど真面目で、賢くて、控えめで、場の空気を読める女性だ。彼女はミランダが僕の側にやって来ると、こんな風に遠慮して距離を置こうとする。
(僕の婚約者は他でもない、エーファなのに)
ミランダは僕のことを兄のように慕っている。幼い内に城に連れてこられたから、家族からの愛情に飢えているのだ。年も近く、共に行動することが多い僕を頼りにするのはどうしようもない。
だけど、僕自身がそう思うのと、エーファが思うのとでは話が違う。
エーファはもっとワガママになるべきだ。
自分以外の令嬢が僕に近づくことを嫌だと思っていいし、文句を言って然るべきだし、僕に甘えてくれて良い。寧ろ困らされるぐらいが丁度良いのに、エーファはとにかく聞き分けが良い……というか、本当に自己主張が少ないと思う。
(僕はもっとエーファに甘えられたい)
そう思うからこそ、僕はミランダのワガママを適当に流しているのに、エーファは未だに本心を見せてくれないのだ。