※追加更新終了【短編集】恋人になってくれませんか?
「――――――差し出がましいことを申しました。申し訳ございません」


 そう言ってエーファは恭しく頭を下げる。


「そんなこと、言ってないだろう?」


 僕達はあと二年もすれば結婚する間柄だ。そんなに畏まる必要はない――――というか、畏まって欲しくない。そう思うと、どうしても不機嫌な声音になってしまう。


「そうよそうよ。変な風に勘繰られて、シェイマス様が気の毒だわ。
シェイマス様、エーファ様の言うことなんて気にしちゃ駄目ですよ?」


 そう言ってミランダがニコリと微笑む。僕は思わず小さなため息を漏らした。


「別に、気にはしないよ」


 僕はただ、エーファに頼られたいだけ。素直になって欲しいだけなのだから。


「……そうですか」


 エーファは僕を見上げつつ、ほんのりと頬を染めて微笑む。その愛らしい表情、仕草、彼女の全てに、身体中の血がザワザワと騒いだ。


(早くエーファと結婚したい)


 僕の数歩後ろを歩く彼女を振り向きつつ、心からそんなことを思った。


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