※追加更新終了【短編集】恋人になってくれませんか?
「――――ミランダ様。いらっしゃっていたのですね。御機嫌よう」


 エーファはほんのりと目を丸くしつつ、優雅に挨拶をする。ミランダはそっと目を細めると、ソファから立ち上がった。


「御機嫌よう、エーファ様。わたし、シェイマス様と一緒にお茶を戴いていましたの。とっても楽しかったわ」


 そう言ってミランダは僕の腕をギュッと抱く。


「シェイマス様ったら、わたしのためにご自身でお茶を淹れてくださったのよ? お茶菓子だってこんなに沢山用意してくださったし、色んなことをお話してくださって……本当に夢のようなひと時だったわ」


 ミランダは上目遣いで僕のことを見つめつつ、グイグイと手を引っ張る。


「そうでしたか。それは……良かったですね」


 エーファは困ったように微笑んでから、僕からそっと視線を逸らす。


「このぐらい、当然だ」


 僕はミランダを連れてソファに腰掛けつつ、エーファにも向かいに座るよう促した。
 それから侍女を呼び、エーファの分のお茶を準備させる。自然と大きなため息が漏れた。


(エーファはどうして言い返さないんだ?)


 お茶だろうがお茶菓子だろうが、エーファにこそ、良いものを用意しているに決まっている。そんなもの、一目見ればわかるはずだ。

 それなのに、エーファはミランダの言うことを笑って受け流してしまう。

 彼女の奥ゆかしさは愛しく思えど、こと僕に関することは別だ。もっと自己主張をしてほしい。僕に愛されていると胸を張って欲しいと思う。

 そっと目配せをすれば、エーファは僕の気持ちなんてちっとも気づいていないようで、愛らしい笑みを浮かべつつ、ほんのりと身を乗り出した。


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