※追加更新終了【短編集】恋人になってくれませんか?
***
けれど、それから数日後のこと。
そんな僕の願いは跡形もなく消えうせてしまった。
「――――父上、それは一体、どういうことでしょう?」
目の前には僕の両親に加え、エーファや彼女の両親、それからミランダや側近の数人が並ぶ。心臓がバクバクと嫌な音を立てて鳴り響き、動揺から息が上手く吸えなかった。
「言葉通りの意味だ。
今この時をもって、おまえとエーファの婚約は破棄する。
シェイマス――――おまえは聖女ミランダと結婚するように。以上だ」
「冗談、ですよね?」
僕の腕に抱き付くミランダをそのままに、僕は声を震わせる。全身から血の気が引くような心地がした。
「冗談の筈がないだろう」
そう口にする父上は真顔だった。
僕はミランダを引き剥がすと、父上の前へと躍り出る。眉間に皺を寄せ、首を横に振りながらゴクリと唾を呑み込んだ。
「お待ちください! 僕達の婚約は十年も前に結ばれたものです。それなのに、どうして今更そのようなことを……? どうして僕に相談もなく、勝手にお決めになったのですか⁉」
膝がガクガクと震え、今にも崩れ落ちそうだった。僕を見つめるエーファはとても悲し気で、今にも泣き出しそうに見える。
(嫌だ……嫌だ、嫌だ!)
エーファを諦められるはずがない。手放せるはずがなかった。
「侯爵家から予てより、結婚を辞退したい旨の申し出を受けていたのだ。エーファが『自分はシェイマスの妃に相応しくない』と」
「辞退⁉」
愕然としつつ、僕は叫び声を上げる。エーファを見れば、彼女はそっと目を伏せた。
けれど、それから数日後のこと。
そんな僕の願いは跡形もなく消えうせてしまった。
「――――父上、それは一体、どういうことでしょう?」
目の前には僕の両親に加え、エーファや彼女の両親、それからミランダや側近の数人が並ぶ。心臓がバクバクと嫌な音を立てて鳴り響き、動揺から息が上手く吸えなかった。
「言葉通りの意味だ。
今この時をもって、おまえとエーファの婚約は破棄する。
シェイマス――――おまえは聖女ミランダと結婚するように。以上だ」
「冗談、ですよね?」
僕の腕に抱き付くミランダをそのままに、僕は声を震わせる。全身から血の気が引くような心地がした。
「冗談の筈がないだろう」
そう口にする父上は真顔だった。
僕はミランダを引き剥がすと、父上の前へと躍り出る。眉間に皺を寄せ、首を横に振りながらゴクリと唾を呑み込んだ。
「お待ちください! 僕達の婚約は十年も前に結ばれたものです。それなのに、どうして今更そのようなことを……? どうして僕に相談もなく、勝手にお決めになったのですか⁉」
膝がガクガクと震え、今にも崩れ落ちそうだった。僕を見つめるエーファはとても悲し気で、今にも泣き出しそうに見える。
(嫌だ……嫌だ、嫌だ!)
エーファを諦められるはずがない。手放せるはずがなかった。
「侯爵家から予てより、結婚を辞退したい旨の申し出を受けていたのだ。エーファが『自分はシェイマスの妃に相応しくない』と」
「辞退⁉」
愕然としつつ、僕は叫び声を上げる。エーファを見れば、彼女はそっと目を伏せた。