※追加更新終了【短編集】恋人になってくれませんか?
32.愚か者の話をしよう(2)
***
翌朝、希望と絶望を胸に僕は目覚めた。
(夢であってほしい……)
寝台で一人頭を抱えながら、胸がザワザワと騒ぐ。
目を瞑るのが怖かった。目を開けるのが怖かった。
僕の隣にエーファが居て、いつものように微笑んでいる――――そんな夢を見たい――――それが現実だと思いたかった。
けれど、現実と言うのは残酷だ。
「おはようございます、シェイマス様」
底抜けに明るい声音を響かせ、僕の部屋にミランダが入ってくる。僕付きの侍女達が皆困惑した表情で、彼女の側に付き従っていた。
「ミランダ……どうしてここに?」
「嫌ですわ、シェイマス様。わたしはあなたの婚約者ですもの。誰よりも先におはようの挨拶をしたかったんです」
そう言ってミランダはニコニコと屈託のない笑みを浮かべる。胸が勢いよく抉られるような心地がした。
「――――すまないが、出て行ってくれないか? 今日はもう少し休みたい」
僕はそう言ってため息を吐く。
普段ならとっくに起き出し、朝の鍛錬に出掛ける時間だ。けれど、今の僕には指先を動かすことすら億劫だし、怠くて辛くて堪らない。
それに、悪いのは僕だと分かっていても、ミランダの顔を見たくはなかった。嫌でも現実を思い知らされるし、一緒に居ると、胸やけを起こしたかの如くムカムカする。
春の陽気のように柔らかで温かなエーファが懐かしくなって、涙が零れ落ちそうになった。
翌朝、希望と絶望を胸に僕は目覚めた。
(夢であってほしい……)
寝台で一人頭を抱えながら、胸がザワザワと騒ぐ。
目を瞑るのが怖かった。目を開けるのが怖かった。
僕の隣にエーファが居て、いつものように微笑んでいる――――そんな夢を見たい――――それが現実だと思いたかった。
けれど、現実と言うのは残酷だ。
「おはようございます、シェイマス様」
底抜けに明るい声音を響かせ、僕の部屋にミランダが入ってくる。僕付きの侍女達が皆困惑した表情で、彼女の側に付き従っていた。
「ミランダ……どうしてここに?」
「嫌ですわ、シェイマス様。わたしはあなたの婚約者ですもの。誰よりも先におはようの挨拶をしたかったんです」
そう言ってミランダはニコニコと屈託のない笑みを浮かべる。胸が勢いよく抉られるような心地がした。
「――――すまないが、出て行ってくれないか? 今日はもう少し休みたい」
僕はそう言ってため息を吐く。
普段ならとっくに起き出し、朝の鍛錬に出掛ける時間だ。けれど、今の僕には指先を動かすことすら億劫だし、怠くて辛くて堪らない。
それに、悪いのは僕だと分かっていても、ミランダの顔を見たくはなかった。嫌でも現実を思い知らされるし、一緒に居ると、胸やけを起こしたかの如くムカムカする。
春の陽気のように柔らかで温かなエーファが懐かしくなって、涙が零れ落ちそうになった。