※追加更新終了【短編集】恋人になってくれませんか?
「まさに心痛だな――――姫様から婚約を破棄されたら、俺があなたと結婚するとでも思っていたのですか?」


 レグラスの言葉に、ジェニュインは弾かれたように目を見開く。彼女の顔は真っ赤に染まり、唇は真一文字に引き結ばれていた。


「そんな――――わたくしはただ、王配になれないなら、王女との結婚はお相手の負担になるだけだと――――そう事実を教えてあげたまでですわ」


 心外だとでも言いたげに、ジェニュインは首を傾げる。


「俺がいつ王配になりたいと言った?」

「え?」

「そんなもののために、俺は努力をしてきたわけじゃない」


 そう言ってレグラスは私のことを真っ直ぐに見つめた。普段とは違う、熱っぽい瞳。眉間に皺を寄せ、苦し気にこちらを見つめる彼に、こちらまで胸が締め付けられる。


「俺はただ、姫様の――――シュリズィエ様に相応しい男になりたかっただけだ」


 レグラスの言葉が真っ直ぐ胸に響いた。瞳がじわじわと熱くなって、息苦しい。思わず目を背けようとした私にレグラスは「ちゃんと俺を見てください」と、そう言った。


「ジェニュイン様――――数年前からあなたが陛下と王妃様が子を授かれるよう、助力してきたことは知っています。お二人の希望に沿ったものですし、そのこと自体を責めるつもりはありません。
けれど、俺の気持ちを勝手に決めつけ、姫様の心を傷つけたことは許せない」


 ジェニュインは顔をクシャクシャにし、勢いよく部屋を飛び出す。私は呆気にとられたまま、レグラス様の腕に抱かれていた。


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