※追加更新終了【短編集】恋人になってくれませんか?
「ねえ、ラファエル。婚約破棄だなんて、あなた本気で言ってるの? そこの猫かぶり娘が良いって、本気で?」


 こんな時に良い子ぶったところで仕方がない。あたしはラファエルに向かって単刀直入に問いかける。


「ああ」


 ラファエルの返事は冷たかった。あたしに対しては淡々と、けれどメアリーに対しては蕩けるような極上の笑みを浮かべる。腹立たしさを押し殺し、あたしは静かに息を吐いた。


「けれど、冷静になってよく考えてごらんなさいよ。その子と結婚したところで爵位は手に入らないのよ? 我が家の財産だってそうだわ。あなたはそんな未来を望んでいるの?」

「まぁ、お義姉さまったら……なにもご存知ないのね? お義父さまはお義姉さまでなく、わたしに全財産を継がせる気でいらっしゃるのよ? 爵位だってそう。わたしの結婚相手にと思し召しなの」


 ニヤリと、メアリーが口角を上げて笑う。
 あたしは思わず身を乗り出した。


「そんな……そんな馬鹿なこと、あるわけ無いでしょう⁉ どうして実の娘を差し置いて、他人の貴女に財産や爵位を与えようなんて思うのよ!」

「だけどそれが事実だもの。ねえ、お母さま」


 すると、これまで黙ってその場に控えていた義理の母が薄ら笑いを湛え、あたしの前に躍り出た。


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