※追加更新終了【短編集】恋人になってくれませんか?
兎にも角にも住む場所を確保しなければ。
闇夜を一人進みつつ、寒さに身体を震わせる。
せめてもの情けなんて、あの二人には存在しなかった。着の身着のまま追い出されて、心もとないったらありゃしない。
するとその時、闇夜に溶けるようにして、重厚な外套を纏った一人の男があたしの前に現れた。
ペリドットのように明るい男の緑色の瞳が、地上の星のように輝きを放つ。ふと視線を上げれば、男の頭には、雄牛のように大きな角が二本生えており、背には漆黒の翼が生えていた。
(悪魔だ)
禍々しい雰囲気。
心臓がドクドクと鳴り響く。
息を呑むあたしの目の前に男がやってくる。
雪のように白い肌。真っ黒な長い髪の毛。悪魔だと知らなければどんな乙女も虜にできそうなほど、彼は美しい目鼻立ちをしていた。
「あんた――――あたしの魂を取りに来たの?」
神様は何処までもあたしに対して意地悪らしい。けれど、悪魔は口の端をニヤリと上げ、大きく首を横に振った。
「取りはしない。だが、売る気はないか?」
「え?」
魂を売る? 一体、どういうことだろう?
困惑しているあたしを見下ろし、悪魔はそっと目を細めた。
闇夜を一人進みつつ、寒さに身体を震わせる。
せめてもの情けなんて、あの二人には存在しなかった。着の身着のまま追い出されて、心もとないったらありゃしない。
するとその時、闇夜に溶けるようにして、重厚な外套を纏った一人の男があたしの前に現れた。
ペリドットのように明るい男の緑色の瞳が、地上の星のように輝きを放つ。ふと視線を上げれば、男の頭には、雄牛のように大きな角が二本生えており、背には漆黒の翼が生えていた。
(悪魔だ)
禍々しい雰囲気。
心臓がドクドクと鳴り響く。
息を呑むあたしの目の前に男がやってくる。
雪のように白い肌。真っ黒な長い髪の毛。悪魔だと知らなければどんな乙女も虜にできそうなほど、彼は美しい目鼻立ちをしていた。
「あんた――――あたしの魂を取りに来たの?」
神様は何処までもあたしに対して意地悪らしい。けれど、悪魔は口の端をニヤリと上げ、大きく首を横に振った。
「取りはしない。だが、売る気はないか?」
「え?」
魂を売る? 一体、どういうことだろう?
困惑しているあたしを見下ろし、悪魔はそっと目を細めた。