※追加更新終了【短編集】恋人になってくれませんか?
「命は取らない。その代わり、お前の全てを俺によこせ。
復讐したい相手がいるのだろう?」


 その瞬間、あたしは思わず目を瞠った。
 どうやらこの男には全てを見透かされているらしい。
 ふふ、と小さく笑い声が漏れる。あたしはゆっくりと悪魔を見つめ返した。


「良いわ。あいつらに復讐できるなら、魂なんて幾らでも売ってあげる」


 目に見えない意地悪な神さまに祈りを捧げるぐらいなら、目の前の悪魔に全てをくれてやる。


「契約成立だな」


 彼はあたしの手を取り、尖った牙で指先を噛んだ。


「っ痛……」


 プツリと皮膚が破れる音、痛みが走り、血がポタポタと零れ落ちる。悪魔がそれを舐めとれば、ポウと緑色の光が灯る。くらりと一瞬目眩が走った。



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