※追加更新終了【短編集】恋人になってくれませんか?
33.全力で愛を叫ばせろ(2)
***
瞬き一つ、あたしは大きな屋敷の前に移動していた。
我がラグエル邸の数倍大きな敷地の中にそびえる石造りの建物。古めかしく重厚で、とても近寄りがたい雰囲気を醸し出している。木々がざわめき、あたりにはコウモリが飛び交う。グェーとおどろおどろしい鳴き声が何処からともなく聞こえてきて、あたしは静かに息を呑んだ。
「魔界?」
「よく見ろ愚か者め。思い切り人間界だ。人間を魔界に連れていけば、瘴気で一秒だって立っていられん。そのぐらい常識だろう?」
「いや、そんなことあたしが知るわけないじゃない」
こちとら普通の人間で、悪魔の常識なんて知るよしもないんですけど。
すると、悪魔は凶悪な笑みを浮かべ、あたしの瞳から数ミリの位置に爪を立てる。ヒッと小さな悲鳴が漏れた。
「……失礼いたしました」
「分かれば良いのだ、分かれば」
少しでも動けば目玉が抉られる状況で、下手なことが言えるはずもない。
この男、やはり危険だ。
あたしはほんの少しだけ、彼の手を取ったことを後悔し始めていた。
屋敷の扉が自動で開く。あたしは彼の後ろに続いた。
邸内はとても薄暗い。だけど、思ったよりも普通というか……荘厳で美しいという印象だ。
こんなに広い屋敷なのに、出迎える人は誰も居ない。
「一人暮らし?」
「お前の目は節穴か? よく見ろ馬鹿者」
悪魔にグイと首を横向けられ、あまりの痛みに目を瞠る。
だけどその瞬間、小さな毛玉の塊みたいな何かが、あたしの顔めがけてダイブしてきた。
「ギャッ!」
それを封切りに、空気が目に見えてモコモコと動き出す。身構えるあたしを前に、ボンと音を立てて悪魔たちが表れた。
タキシードを着た猫、三ツ首の子犬、小鬼に、小鳥サイズの白いドラゴンなどなど。
瞬き一つ、あたしは大きな屋敷の前に移動していた。
我がラグエル邸の数倍大きな敷地の中にそびえる石造りの建物。古めかしく重厚で、とても近寄りがたい雰囲気を醸し出している。木々がざわめき、あたりにはコウモリが飛び交う。グェーとおどろおどろしい鳴き声が何処からともなく聞こえてきて、あたしは静かに息を呑んだ。
「魔界?」
「よく見ろ愚か者め。思い切り人間界だ。人間を魔界に連れていけば、瘴気で一秒だって立っていられん。そのぐらい常識だろう?」
「いや、そんなことあたしが知るわけないじゃない」
こちとら普通の人間で、悪魔の常識なんて知るよしもないんですけど。
すると、悪魔は凶悪な笑みを浮かべ、あたしの瞳から数ミリの位置に爪を立てる。ヒッと小さな悲鳴が漏れた。
「……失礼いたしました」
「分かれば良いのだ、分かれば」
少しでも動けば目玉が抉られる状況で、下手なことが言えるはずもない。
この男、やはり危険だ。
あたしはほんの少しだけ、彼の手を取ったことを後悔し始めていた。
屋敷の扉が自動で開く。あたしは彼の後ろに続いた。
邸内はとても薄暗い。だけど、思ったよりも普通というか……荘厳で美しいという印象だ。
こんなに広い屋敷なのに、出迎える人は誰も居ない。
「一人暮らし?」
「お前の目は節穴か? よく見ろ馬鹿者」
悪魔にグイと首を横向けられ、あまりの痛みに目を瞠る。
だけどその瞬間、小さな毛玉の塊みたいな何かが、あたしの顔めがけてダイブしてきた。
「ギャッ!」
それを封切りに、空気が目に見えてモコモコと動き出す。身構えるあたしを前に、ボンと音を立てて悪魔たちが表れた。
タキシードを着た猫、三ツ首の子犬、小鬼に、小鳥サイズの白いドラゴンなどなど。