※追加更新終了【短編集】恋人になってくれませんか?
「た、助けてくれ! アイナさん!」

「ん?」


 気がつけば、あたしの足にトミーが縋り付いていた。どうやら気力を取り戻したらしい。中々に気骨がある――――黙って見下ろしていたら、彼は腕に力を込めた。


「俺のことが好きだと――――一番素敵だと言っていただろう? 頼むよ。君がダミアンさまとどういう関係かは知らないけど、どうか情けをかけてほしい。どうか、どうか」

「……アイナは俺のものだぞ、トミー」


 ダミアンがそう言って、トミーのことを踏みつける。


(うわぁ、痛そう……)


 メリッと地面にめり込む音がして、あたしは思わず顔をしかめた。


「アイナさんが? まさか、俺を騙していたのか⁉」

「あら……騙したなんて人聞きが悪い。
言ったでしょう? 貴方は『わたくしが出会った人間(ルビ)の中で、一番素敵な人』だって。ダミアンは人間じゃないもの。ノーカウントよ。
残念だけど、あたしは貴方を助けはしないわ。全部、自業自得でしょう?」


 まぁ、本当は一番素敵な人だなんて思っちゃいないんだけどね――――心のなかで付け加えつつ、あたしはニコリと微笑みを浮かべる。


 それでも、彼が絶望するには十分だったらしい。トミーはハクハクと口を動かしつつ、天を仰いで放心している。
 ダミアンは愉悦に満ちた表情を浮かべ「よくやった」とあたしに向かって言った。



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