※追加更新終了【短編集】恋人になってくれませんか?
「姫様が王位を継ぐために並々ならぬ努力をなさってきたこと、俺は知っています。苦労を見せず、弱音も吐かず、いつも素直で明るくて優しい姫様が、俺はずっと好きでした。あなたが王位を継ぐところを隣で見たいと、ずっとそう思っていました。
けれど、それと同じぐらい、俺は女の子としての幸せを手にしたあなたが見たい。俺の手であなたを幸せにしたいと、そう思ったのです。
国益がどうだとか、俺が誰にも言わせません。その分、俺が頑張ります。だから、あなたはただ、幸せになって良いんです」


 そう言ってレグラスは、私の左手薬指に唇を寄せる。ほんのりと温かい口付け。春が訪れたかのように、心の中が穏やかで幸せな気持ちで満たされた。


「――――レグラス」

「はい」

「これからはもう少し小出しに――――情報過多で、頭が付いて行けてないから」


 彼の表情が移ろうのも、こんな風に言葉を贈られるのも、全部初めての経験だもの。正直言って容量オーバーだ。そう思っていたら、レグラスは小さく声を上げて笑った。


「はい。そう致します」


 目尻に涙を浮かべて笑うレグラスなんて、これまで全然見たことがない。優しくて穏やかで、愛情に溢れていて――――でも、それこそ、私が知っているレグラスだ。気づいたら私は、彼の胸に飛び込んでいた。


「ねぇ……今度は、私の話を聞いてもらえる?」


 レグラスの背に腕を回しながら、私は尋ねる。彼はほんのりと首を傾げ、私のことを真っすぐに見つめている。その表情が堪らなく愛しい。


「レグラスのことが好き!」


 言えば、レグラスは花が綻ぶ様に微笑み、私のことを力強く抱き締めるのだった。


(END)
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