※追加更新終了【短編集】恋人になってくれませんか?
4.欲しがりな妹の素敵な返戻品(1)
「お姉さま、わたくし欲しいものがあるんです」
碧い瞳をウットリと細め、妹であるマーガレットが微笑む。
(欲しいもの、ねぇ)
お姉さまと呼ばれた少女――――ダリアは、心の中でため息を吐きながら、そっと顔を上げた。
「そう。今度は一体何が欲しいの?」
請われたら与える。それを前提とした、気のない返事。
マーガレットが今身に着けている美しい髪飾りも、繊細な刺繍の入ったドレスも、元々はダリアの物だった。
それだけじゃない。
靴やカバン、可愛い調度品や本、それから侍女や家庭教師、友人たちに至るまで、ダリアの大切なものは全て、マーガレットに奪われてしまったのである。
「ふふ、何だと思う?」
マーガレットは口元に手を当て、優雅に笑って見せた。彼女の薬指には、大きくて美しい宝石が輝きを放っている。
「分からないわ。あなたが欲しがるようなもの、わたしにはもう、何も残っていないと思うのだけど」
そう言ってダリアは目を伏せた。
最初の頃はダリアだって、マーガレットの要求に抵抗していた。「嫌だ」と、「これはわたしのものだ」と、きちんと主張していた。
けれど、二人の両親がそれを許さなかった。『姉に生まれたならば、妹が欲しがるものを与えるのは当然だ』と諭され、その癖二人はダリアに多くを買い与えてはくれない。
おかげでダリアは、公爵令嬢らしからぬ空っぽの部屋で、侍女すらいないまま、寂しい生活を送っているのだ。
「隠したって無駄よ!あるでしょう?お姉さまのとっておきが!」
ダリアの隣に腰掛けながら、マーガレットはウットリと目を細める。頬がほんのりと紅く染まっていた。
「とっておき?」
頭に浮かぶのは空っぽなクローゼットと、もの寂しい部屋。残念なことに、ダリアには思い至る節がない。
わけもわからないまま首を傾げていると、マーガレットは勢いよくダリアの手を握った。
「分からない人ね。王太子殿下との婚約話よ!決まってるでしょ?」
そう言ってマーガレットは瞳をキラキラと輝かせている。
碧い瞳をウットリと細め、妹であるマーガレットが微笑む。
(欲しいもの、ねぇ)
お姉さまと呼ばれた少女――――ダリアは、心の中でため息を吐きながら、そっと顔を上げた。
「そう。今度は一体何が欲しいの?」
請われたら与える。それを前提とした、気のない返事。
マーガレットが今身に着けている美しい髪飾りも、繊細な刺繍の入ったドレスも、元々はダリアの物だった。
それだけじゃない。
靴やカバン、可愛い調度品や本、それから侍女や家庭教師、友人たちに至るまで、ダリアの大切なものは全て、マーガレットに奪われてしまったのである。
「ふふ、何だと思う?」
マーガレットは口元に手を当て、優雅に笑って見せた。彼女の薬指には、大きくて美しい宝石が輝きを放っている。
「分からないわ。あなたが欲しがるようなもの、わたしにはもう、何も残っていないと思うのだけど」
そう言ってダリアは目を伏せた。
最初の頃はダリアだって、マーガレットの要求に抵抗していた。「嫌だ」と、「これはわたしのものだ」と、きちんと主張していた。
けれど、二人の両親がそれを許さなかった。『姉に生まれたならば、妹が欲しがるものを与えるのは当然だ』と諭され、その癖二人はダリアに多くを買い与えてはくれない。
おかげでダリアは、公爵令嬢らしからぬ空っぽの部屋で、侍女すらいないまま、寂しい生活を送っているのだ。
「隠したって無駄よ!あるでしょう?お姉さまのとっておきが!」
ダリアの隣に腰掛けながら、マーガレットはウットリと目を細める。頬がほんのりと紅く染まっていた。
「とっておき?」
頭に浮かぶのは空っぽなクローゼットと、もの寂しい部屋。残念なことに、ダリアには思い至る節がない。
わけもわからないまま首を傾げていると、マーガレットは勢いよくダリアの手を握った。
「分からない人ね。王太子殿下との婚約話よ!決まってるでしょ?」
そう言ってマーガレットは瞳をキラキラと輝かせている。