※追加更新終了【短編集】恋人になってくれませんか?
(ザックさまは今頃、どうしているだろう?)


 ウルの腹に顔を埋め、クロシェットは静かに涙を流す。

 ザックに会いたい。彼の声が聞きたい。
 早く迎えに来て――――

 そう思ったその時だった。


『クロシェット!』


 上空から大きな鳥が舞い降りる。その身体は紅の炎で覆われ、金色の火の粉がキラキラと光り輝いていた。


「フェニ!」


 フェニと呼ばれたその鳥は、二年前、クロシェットがザックたちに託した友人だ。彼は定期的にこの地を訪れ、ザックの様子を教えてくれている。
 最後に会ったのは三ヶ月前。こんなにも間が空いたのは初めてのこと。久々の報告に緊張が走る。


『あいつが――――ザックが勝ったんだ!』


 フェニが言う。
 それはこの二年間、クロシェットが待ち続けていた言葉だった。嬉しさのあまり泣き崩れるクロシェットに、ウルもフェニも優しく微笑む。

 ずっと不安で堪らなかった。寂しくて堪らなかった。
 このままザックに――――誰にも会えないのではないか。
 この湖で一生を終えなければならないのでは、と。


 けれど、これでようやくザックに会うことができる。彼と共にいることができる。


『良かったな、クロシェット』

『本当に良かった』


 クロシェットは何度も頷きながら、ザックとの再会に胸を膨らませた。


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