※追加更新終了【短編集】恋人になってくれませんか?
34.遅くなってごめん!(2)
***
ウルは走った。
一刻も早く、クロシェットをザックから引き離さなければならない。
英雄に恥をかかせた。
王族の婚姻に泥を塗った。
この国はもう、クロシェットにとって安全な場所ではなくなっている。
「ウル、もう良いわ……」
クロシェットが呟く。
ウルはなおも風を切りつつ、クロシェットの言葉に耳を傾ける。
「もう、どうでも良い。このまま消えてしまいたい」
涙がクロシェットの頬を伝う。
待っていた。
信じていた。
会えばきっと、笑ってくれる――――遅くなってごめんと言いながら、抱き締めてくれると思っていた。
けれどそれは、クロシェットの幻想に過ぎない。
ザックは彼女を裏切った。
まるで、はじめから存在すらしなかったかのように扱った。
己には何の価値もないと思い知るには十分だった。
『そんなことを言うな! この国を守ったのはあいつじゃない。クロシェットだ! 君が頑張ったからこそ、この国の民は救われたんだ!』
ウルが叫ぶ。
クロシェットは首を横に振った。
彼女の功績なんて、誰も知らない。
そもそもクロシェットは、国を守ろうなんて大それたことを思ったことはなかった。
全てはザックのためにしたことで、彼が居なければ何の意味もないのだから。
ウルは走った。
一刻も早く、クロシェットをザックから引き離さなければならない。
英雄に恥をかかせた。
王族の婚姻に泥を塗った。
この国はもう、クロシェットにとって安全な場所ではなくなっている。
「ウル、もう良いわ……」
クロシェットが呟く。
ウルはなおも風を切りつつ、クロシェットの言葉に耳を傾ける。
「もう、どうでも良い。このまま消えてしまいたい」
涙がクロシェットの頬を伝う。
待っていた。
信じていた。
会えばきっと、笑ってくれる――――遅くなってごめんと言いながら、抱き締めてくれると思っていた。
けれどそれは、クロシェットの幻想に過ぎない。
ザックは彼女を裏切った。
まるで、はじめから存在すらしなかったかのように扱った。
己には何の価値もないと思い知るには十分だった。
『そんなことを言うな! この国を守ったのはあいつじゃない。クロシェットだ! 君が頑張ったからこそ、この国の民は救われたんだ!』
ウルが叫ぶ。
クロシェットは首を横に振った。
彼女の功績なんて、誰も知らない。
そもそもクロシェットは、国を守ろうなんて大それたことを思ったことはなかった。
全てはザックのためにしたことで、彼が居なければ何の意味もないのだから。