※追加更新終了【短編集】恋人になってくれませんか?
 国境を抜け、深い森の中へと入る。
 隣国にはまだ、魔獣がうようよ存在していた。

 ウルやフェニは魔獣を滅しながら、前へ前へと進んでいく。


 やがて、一行は森の出口へと差し掛かる。
 クロシェットはそこで、誰かが魔獣と交戦していることに気づいた。


(どうしよう……)


 遠目から判断するに、かなりの苦戦を強いられているらしい。
 手助けすべきか悩みつつ、クロシェットは静かに唇を噛む。


(どうせわたしなんて)


 助けたところで、何の価値もない。
 存在しないも同然の人間なのに、一体何を迷うことがある?

 けれど――――


「フェニ!」


 クロシェットが呼べば、フェニは勢いよく魔獣へと襲いかかる。魔獣が燃え上がり、断末魔が森の木々を揺らし、やがて静寂が訪れる。

 クロシェットはウルに連れられ、フェニの元へと向かった。
 先程まで魔獣と交戦していた若い男性が、彼女のことを呆然と見つめている。


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