※追加更新終了【短編集】恋人になってくれませんか?
4.欲しがりな妹の素敵な返戻品(2)
「エドワード……?」
「久しぶりだね、ダリア」
そこにはつい先日まで、妹――――マーガレットの婚約者だったエドワードがいた。
流れるような黒髪に、金色の瞳、柔和な笑みはダリアの記憶の中の彼と一致している。けれど、身長は随分と高くなったし、引き締まったその身体も、声も、まるで知らない男の人のようだ。
「どうしてここに?」
「ん……ここに来たらダリアに会えるかなぁと思って」
ダリアの胸がズキズキと痛む。
子どもの頃、ダリアとエドワードはよく、ここ――――屋敷の裏で遊んでいた。マーガレットの目に付きづらく、彼女に持ち去られたくないものを隠すのに最適な場所だったからだ。
(結局はバレて、エドワードまであの子のところに行っちゃったけど)
そうしてマーガレットとエドワードの婚約が結ばれたのが数年前のこと。それ以降、ダリアは彼と会うことすら許されなかった。
「ごめんなさいね、エドワード。こんな形で婚約を破棄することになって。あなたはあんなにも妹に尽くしてくれたのに」
深々と頭を下げながら、ダリアは唇を噛む。
エドワードの献身ぶりは有名で、マーガレットがどんな我儘を言っても笑顔で許したし、彼女を淑女として大切にしてくれていたらしい。ダリアがそれを、どれ程羨ましいと思ったことか。誰も知ることは無いけれど。
「尽くす?……あぁ、周りからはそう見えるのかな?」
エドワードは首を傾げながら、そっとダリアの隣に腰掛けた。腕が触れそうなほどの距離。ダリアの鼓動がトクトクと早くなった。
「謝るのはこっちの方だよ。ごめんね、予定よりも遅くなってしまったけど」
そう言ってエドワードはダリアの手を握った。大きくて節ばった手のひらは温かい。
「久しぶりだね、ダリア」
そこにはつい先日まで、妹――――マーガレットの婚約者だったエドワードがいた。
流れるような黒髪に、金色の瞳、柔和な笑みはダリアの記憶の中の彼と一致している。けれど、身長は随分と高くなったし、引き締まったその身体も、声も、まるで知らない男の人のようだ。
「どうしてここに?」
「ん……ここに来たらダリアに会えるかなぁと思って」
ダリアの胸がズキズキと痛む。
子どもの頃、ダリアとエドワードはよく、ここ――――屋敷の裏で遊んでいた。マーガレットの目に付きづらく、彼女に持ち去られたくないものを隠すのに最適な場所だったからだ。
(結局はバレて、エドワードまであの子のところに行っちゃったけど)
そうしてマーガレットとエドワードの婚約が結ばれたのが数年前のこと。それ以降、ダリアは彼と会うことすら許されなかった。
「ごめんなさいね、エドワード。こんな形で婚約を破棄することになって。あなたはあんなにも妹に尽くしてくれたのに」
深々と頭を下げながら、ダリアは唇を噛む。
エドワードの献身ぶりは有名で、マーガレットがどんな我儘を言っても笑顔で許したし、彼女を淑女として大切にしてくれていたらしい。ダリアがそれを、どれ程羨ましいと思ったことか。誰も知ることは無いけれど。
「尽くす?……あぁ、周りからはそう見えるのかな?」
エドワードは首を傾げながら、そっとダリアの隣に腰掛けた。腕が触れそうなほどの距離。ダリアの鼓動がトクトクと早くなった。
「謝るのはこっちの方だよ。ごめんね、予定よりも遅くなってしまったけど」
そう言ってエドワードはダリアの手を握った。大きくて節ばった手のひらは温かい。