※追加更新終了【短編集】恋人になってくれませんか?
5.婚約破棄を撤回しようたってもう遅い!結婚はビジネス(契約)なんですよね?(1)
「婚約を破棄したい」
ワーナーからそう告げられたのは、とある夜会会場だった。
「――――婚約破棄、ですか」
わたしは確認のために、彼の言葉を繰り返した。
煌びやかな会場の片隅で、わたしとワーナー、それから見目麗しい金髪の令嬢が三人、言葉少なに見つめ合っている。嫌でも周囲の耳目を集めているのを感じながら、わたしは小さくため息を吐いた。
「どうしてなのか、理由をお聞きしても?」
「君には悪いことをしたと思っている」
わたしの問いかけに、ワーナーは穏やかな笑みを浮かべながらそう答えた。幼子を宥めるような、人を小ばかにしたような口調。残念だけど、とても『悪い』と思っている人間には見えない。半ばうんざりしながらも、わたしは彼の次の言葉を待った。
「だけどな、リーザ……結婚はビジネスなんだ」
そう言ってワーナーは、傍らの女性を抱き寄せた。
鮮やかなブロンドに目が覚めるようなピンクのドレス。好戦的な瞳でわたしを見つめながら、女性は笑う。
「セルマの親父さんは投資家なんだ。丁度今、次の投資先を探している所らしい。商工会に顔も広いから、味方に付いてくれれば、うちの事業を今よりもっと拡大できる。だから僕は君ではなく、セルマと結婚することに決めたんだ」
セルマは誇らしげに胸を張りわたしを見下ろす。まるで自分の方が上だと誇示するかのような笑みだった。
「それに加えてこの美貌。田舎臭い君とは大違いだ。彼女ならうちの事業の顔になれる。実業家として、それから一人の男として、僕はセルマに惚れたんだ」
ワーナーの言葉に、セルマはうっとりと頬を染め、目を細めた。
ワーナーからそう告げられたのは、とある夜会会場だった。
「――――婚約破棄、ですか」
わたしは確認のために、彼の言葉を繰り返した。
煌びやかな会場の片隅で、わたしとワーナー、それから見目麗しい金髪の令嬢が三人、言葉少なに見つめ合っている。嫌でも周囲の耳目を集めているのを感じながら、わたしは小さくため息を吐いた。
「どうしてなのか、理由をお聞きしても?」
「君には悪いことをしたと思っている」
わたしの問いかけに、ワーナーは穏やかな笑みを浮かべながらそう答えた。幼子を宥めるような、人を小ばかにしたような口調。残念だけど、とても『悪い』と思っている人間には見えない。半ばうんざりしながらも、わたしは彼の次の言葉を待った。
「だけどな、リーザ……結婚はビジネスなんだ」
そう言ってワーナーは、傍らの女性を抱き寄せた。
鮮やかなブロンドに目が覚めるようなピンクのドレス。好戦的な瞳でわたしを見つめながら、女性は笑う。
「セルマの親父さんは投資家なんだ。丁度今、次の投資先を探している所らしい。商工会に顔も広いから、味方に付いてくれれば、うちの事業を今よりもっと拡大できる。だから僕は君ではなく、セルマと結婚することに決めたんだ」
セルマは誇らしげに胸を張りわたしを見下ろす。まるで自分の方が上だと誇示するかのような笑みだった。
「それに加えてこの美貌。田舎臭い君とは大違いだ。彼女ならうちの事業の顔になれる。実業家として、それから一人の男として、僕はセルマに惚れたんだ」
ワーナーの言葉に、セルマはうっとりと頬を染め、目を細めた。