※追加更新終了【短編集】恋人になってくれませんか?
6.【SCOOP】王太子殿下には想い人が居るらしい【殿下付き侍女の取材記録】(5)
***
七十日目。
今日のわたしは殿下の部屋の掃除当番だった。
掃除は殿下が執務中に行われる。無駄に広く、高い調度品に囲まれたお部屋は、箒を動かすにしても、雑巾で磨き上げるにしても、大きな緊張を伴う。几帳面な殿下のお部屋はいつも、一分の隙なく、全てのものが定位置に収められているから、微妙な変化を逃さないよう、常に注意しなければならない。
(ん? これは……)
そんな殿下にしては珍しく、今日は文机に、紙や筆が出しっぱなしになっていた。見ればそこには、宝石の名前がいくつか書き並べてある。殿下の瞳の色によく似た深い青色の宝石と、赤い色の宝石ばかりだ。
(もしかして、結婚相手にお渡しするための石を選んでいらっしゃるのかな?)
もしも殿下がわたしに取材のヒントを与えようとしているのだとすれば、こうして紙を出しっぱなしにしていることも辻褄が合う。
(お相手は、赤色の瞳をした女性、なんだろうなぁ)
殿下の周りにそんな瞳の色をした女性がいただろうか。
少なくとも、普段殿下と一緒に仕事をしていらっしゃるヴィヴィアン様ではないらしい。
帰ったらこれまでの取材記録を確認しようと思いつつ、わたしは小さくため息を吐いた。
七十日目。
今日のわたしは殿下の部屋の掃除当番だった。
掃除は殿下が執務中に行われる。無駄に広く、高い調度品に囲まれたお部屋は、箒を動かすにしても、雑巾で磨き上げるにしても、大きな緊張を伴う。几帳面な殿下のお部屋はいつも、一分の隙なく、全てのものが定位置に収められているから、微妙な変化を逃さないよう、常に注意しなければならない。
(ん? これは……)
そんな殿下にしては珍しく、今日は文机に、紙や筆が出しっぱなしになっていた。見ればそこには、宝石の名前がいくつか書き並べてある。殿下の瞳の色によく似た深い青色の宝石と、赤い色の宝石ばかりだ。
(もしかして、結婚相手にお渡しするための石を選んでいらっしゃるのかな?)
もしも殿下がわたしに取材のヒントを与えようとしているのだとすれば、こうして紙を出しっぱなしにしていることも辻褄が合う。
(お相手は、赤色の瞳をした女性、なんだろうなぁ)
殿下の周りにそんな瞳の色をした女性がいただろうか。
少なくとも、普段殿下と一緒に仕事をしていらっしゃるヴィヴィアン様ではないらしい。
帰ったらこれまでの取材記録を確認しようと思いつつ、わたしは小さくため息を吐いた。