※追加更新終了【短編集】恋人になってくれませんか?
「殿下……殿下は……」
だけど、どれだけ否定しても、これまでの取材記録は全部、一つの事実を浮き出しにしていた。
殿下がそっと、わたしの手を握る。温かい。けれどその手は、少しだけ震えていた。
「――――スクープ記事を恋文に利用するなんて、前代未聞だと思います」
しかも、その恋文を『受取人』に代筆させようというのだから、殿下は相当悪趣味だ。
「そうだね。俺も、そう思う」
殿下はそう言って、わたしのことをギュッと抱き締めた。
上手に息が出来ない。殿下にしがみ付くようにしながら、わたしはそっと目を瞑った。
「……もしかして殿下には、わたしの心臓の音が聞こえていたりするんですか?」
「うん。でも、いつも俺の音の方が大きくて速いから、あんまり聞かないようにしてる」
「……なにそれっ」
思わずそんな言葉を漏らすと、殿下は小さく声を上げて笑う。その表情があまりにも優しくて、温かくて。瞳に、心に焼き付ける。
一生、他の誰にも見せてなんかあげない。自分だけの記録にするんだって心に決めて、わたしは殿下を抱き締める。
「好きだよ、マイリー」
それから数日後。
アスター殿下の熱愛スクープが、国中を沸かせることになったのでした。
(END)
だけど、どれだけ否定しても、これまでの取材記録は全部、一つの事実を浮き出しにしていた。
殿下がそっと、わたしの手を握る。温かい。けれどその手は、少しだけ震えていた。
「――――スクープ記事を恋文に利用するなんて、前代未聞だと思います」
しかも、その恋文を『受取人』に代筆させようというのだから、殿下は相当悪趣味だ。
「そうだね。俺も、そう思う」
殿下はそう言って、わたしのことをギュッと抱き締めた。
上手に息が出来ない。殿下にしがみ付くようにしながら、わたしはそっと目を瞑った。
「……もしかして殿下には、わたしの心臓の音が聞こえていたりするんですか?」
「うん。でも、いつも俺の音の方が大きくて速いから、あんまり聞かないようにしてる」
「……なにそれっ」
思わずそんな言葉を漏らすと、殿下は小さく声を上げて笑う。その表情があまりにも優しくて、温かくて。瞳に、心に焼き付ける。
一生、他の誰にも見せてなんかあげない。自分だけの記録にするんだって心に決めて、わたしは殿下を抱き締める。
「好きだよ、マイリー」
それから数日後。
アスター殿下の熱愛スクープが、国中を沸かせることになったのでした。
(END)