聖なる夜は我儘なプリンセスと
「早っ……。てゆうか、ビール好きだったんだ」

「何よ?悪い?」

実花子が、鼻を鳴らす。

「接待の時は、おじさま達のウケがいい、日本酒、颯と二人の時は、カクテルだった」

颯先輩の名前を、口に出したのが嫌だったのか、実花子は、梅ささみを引きちぎるようにして小さな口に突っ込むと、運ばれてきた2杯目のビールをグイと飲んだ。

「あんま酒強くないんだから、ペース考えたら?」

「いいでしょ。千歳といる時しか、潰れられないんだから」

「また今日も、潰れた実花子を僕が送れってこと?」

「当たり前でしょ」

実花子が、オレンジベージュの唇を尖らせた。

前回も、酔っ払って眠ってしまった実花子をタクシーでマンションまで送り届け、ベッドに寝かせてから、枕元に水をおいて、風邪をひかさないように布団を被せて帰ったのを思い出す。

「めんどくさいなぁ」

「いいじゃない、どうせ千歳だって彼女いなくて、暇なんだし」

実花子の2杯目のビールグラスは、もう半分以下だ。

元々綺麗な顔をしている実花子の瞳が、だんだん潤んで、とろりとしてくる様は、恋愛感情がなくても色っぽい。
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