聖なる夜は我儘なプリンセスと
「ね、颯先輩の時は?潰れたことないの?」

「うん?何でそんなこと聞く訳?」

「ただの興味」

実花子が、だし巻き玉子を頬張りながら、僕をじっと見つめた。

「……ない。颯には、そういう、私のだらしない姿みせたくないの」

僕は、クククッと笑った。

「僕には、だらしないとこ見られても平気なのにね」

「千歳が、あの美弥って子のことは抱きたいけど、私は抱きたくないのと一緒の感覚よ」

「別に実花子の事、抱きたくないとは言ってないけど?充分魅力的だと思うし」

「……えっ?千歳どしたの?」

実花子が、真面目な顔をしながら、僕の額に、白く華奢な掌を当てた。

「熱は……ないわね」

「実花子は、どうして、そう素直に受け取れないんだろね」

「何のこと?」

目を丸くしている実花子を見ながら、僕は、つくねを咀嚼する。

此処のつくねは、甘だれで、噛めば噛むほどに肉の甘みが、ジワっと滲み出てきて美味い。学生の時の恋愛と違って、互いの性質を擦り合わせながら、ゆっくり熟成していく、大人の恋愛と似てる。

「だからさー、颯先輩に、見せれば良かったのに。ありのままの実花子」
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