聖なる夜は我儘なプリンセスと
「クリスマス……またひとりぼっち……」

「クリスマス?あ、僕もひとりぼっちだから、美味しいイタリアンでも探しといてあげようか?」

「……本当?……ありがと」

僕は、一瞬固まっていた。無意識に一度だけ鼓動が小さく跳ねる。

どうせ、可愛くない返答で実花子に断られるかとばかり思っていたから。

「……もう……1人に……しないで」

ついに、固く瞼を閉じた実花子が、静かに寝息を立て始めた。

「……可愛いとこもいっぱいあるのにね」

僕は、会計を済ませて、迎えにきたタクシーに先にコートと鞄を放り込む。そして起こさないように実花子を横抱きにして、タクシーに乗り込み、そっと後部座席に下ろした。

実花子は、ぐっすり眠っている。この調子じゃ、また朝まで起きないだろう。

(忘れずに目覚まし、かけといてやらなきゃな)

タクシーの心地よい揺れに合わせて、こつんと、僕の肩に実花子の額が寄せられる。

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