交通事故で記憶喪失になった君と、余命一年の私
第6章
私は結局何をどうして、どうされたいんだろう。
自分の病気が治って欲しい?
嶺緒の記憶が戻って欲しい?
嶺緒が私の近くに戻ってきて欲しい?
何を私が望んで、何を叶えてもらいたいの?もう....分からないよ....
早く嶺緒に会いたい。記憶がもう二度と戻らなくても、隣にいてもらいたい。これからまた作ればいいんだもん。だから、早く。早く戻ってきて....
頭の中でぼーっと考えていた。
──ガラガラ
「月葉!おはよ!」
急にドアが開いて見てみると制服姿の瑠奈、輝羅、流がいた。
「みんな!どうした?」
「どうしたも何も、今日終業式だったからさ!このまま病院行こっかなって。ねっ!」
輝羅が何か嬉しそうにしながら瑠奈に共感を求めていた。
「実はね、今日でこのクラスは終了だからみんなで月葉に寄せ書きを書いてきたんだ!」
「そうなの!?」
ドア付近でずっと立っていた流が後ろに隠していたであろう紙袋をガサガサと漁りながら私の真横に来た。
「はい、これ」
表紙に始業式にクラスみんなで撮った写真が貼られていて、一年前になったとおもうとすごく早いと感じる。
写真の中の私は両サイドに瑠奈と輝羅がいて、後ろに嶺緒と流がいる。
嶺緒の笑顔を久しぶりに見た気がした。この時の私はまさかこんなことになるだなんて思っても見なかった。
中を開いてみると、クラスみんなからの寄せ書きが埋め尽くされていた。
私はちょっとした病気になってしまったから治療に専念するために、学校を休んでいると言われているらしい。
みんなからのメッセージと幸せだった頃の写真を見ていたら涙が溢れた。びっくりしたみんなは私の元へハグをしにきてくれた。
「大丈夫だよ月葉。大丈夫...きっと大丈夫だよ...」
・・・・・・・・
あれから一ヶ月が経った。
みんなは無事3年生になり、私はいまだにベットの上での生活を続けている。
体調はどんどん悪くなる一方だけど、まだ歩けるし喋れるから自分では大丈夫だと思っている。
みんな時間がある時にお見舞いに来てくれるし、グループラインでは毎日その日の出来事を話してくれて....
その時間は私が病気にかかっていることを忘れられるくらい大切な時間....
───ガラガラ
「崎谷さん。体調はどうですか?」
先生が病室に入ってきた。
「今の所は大丈夫です。それよりどうかしたんですか?」
大体この時間に病室に来るのは看護師さんであり、先生が来ることは滅多にない。そんな先生が来たから何かあったのではないかと思う。
「実は崎谷さんにお話があります。ただ、この話はご両親もご一緒の方がいいかと思いますので先ほどご連絡をさせていただきました。夕方に来ていただけるとのことでしたので、その時にお話をさせていただきます。」
真剣な表情で目を合わせて先生は私に言ってきた。
これは只事ではない。そう感じ取れた。
考えれることは二つ。私の病気が落ち着いてきたのか...それとも、悪化したのか....
「わかりました」
私はただそうやって返事をすることしかできなかった。