続・23時のシンデレラ〜甘い意地悪なキスをして〜
麗夜が、何を企んでいるのかは分からないが、客観的に見れば、この対談は、安堂不動産にとっては、企業イメージアップも図れて、さらにはアウトレットモールへの宣伝にもなり、メリットしかないように思える。

ただ、会社の、副社長である颯のメリットになる様なことを、麗夜が、純粋に考えているとも思えない。

「颯先輩と付き合ってから、美弥変わったな」

見上げれば、千歳が、綺麗な二重瞼をにこりと細めている。

「そかな?」

「うん、あんな泣き虫だった美弥が、滅多やたらに泣かなくなったじゃん」

「え……そんなに泣き虫だった?」

「僕から見たら、誰か側に居てあげないと、震えて、すぐ泣いちゃうウサギみたいだったけど?」

「ウサギ?!……あんなに前歯出てる?!」

「ぷっ。美弥はすぐ本気にするから、ウケる」

千歳が、手で口を覆い、笑いを押し殺しながら、意地悪く笑った。麻美にも聞こえていたらしく、千歳の含み笑いと一緒に麻美のクスクスと笑う声が重なる。 

「もうっ、千歳くんの意地悪!」

「ふっ……美弥が、意外と落ち着いてて安心した。えと、あと5分後に始まるな」

千歳が、事務所の時計を確認すると、自分の席に戻っていく。それとほぼ同時に、事務所に麗夜が入ってきた。

騒がしかった事務所は、麗夜のもつ独特な雰囲気とカリスマ性で一気に静かになる。
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