続・23時のシンデレラ〜甘い意地悪なキスをして〜
事務所内が、一気にザワザワと落ち着かなくなる。

それと同時に、私の心の中は、濁りを増していく。いつからこんなに、醜く、嫉妬するようになったんだろうか。

颯を誰にも取られたくない。
触れられたくない。

そんな自己中心的な考えが、頭によぎる様になってしまっている。

「英玲奈みたいな可愛い妹に、そう言ってもらえて嬉しいです。ただ、英玲奈にも話しましたが……僕、来年結婚するんです」

麗夜が、驚いた様子でガタンッと椅子から立ち上がると同時に、事務所内は、女性営業アシスタントの悲鳴と営業マン達の戸惑いの声で一気に騒がしくなった。

『それは、安堂副社長、ここで発表されても大丈夫ですか?』

「そうですね。相手の方は、一般の仕事をされてる方ですので、この対談の雑誌掲載時は、伏せていただいて、婚約の正式発表の際は、アウトレットモールオープンと共に、御社の独占インタビューとして、取り上げて頂けたらと思います」

颯は、頬を引き攣らせる英玲奈を横目に、カメラを真っ直ぐに見つめている。その瞳と画面越しに、私の瞳が、重なるような気がする。

(颯……)

じんわりと画面がぼやけそうになって、私は慌てて、視線を膝に戻した。

『いやー、こんな、安堂副社長みたいな方とご結婚される一般の方って、どんな方なのでしょうね。まさに、シンデレラストーリーですね』

「有難う御座います。英玲奈も式には来てくれよな」

「……えぇ、勿論よ。楽しみにしてるわ」

胸が、いっぱいになる。颯の気持ちが嬉しすぎて、言葉にならない。私は、気を緩めたら、すぐにでも溢れ出しそうな涙を無理やり引っ込める。

『それでは、最後にお2人の記念撮影に移らせて頂きます。この配信をご覧の安堂不動産の社員の皆様、今しばらくこのままお待ちくださいませ』
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