続・23時のシンデレラ〜甘い意地悪なキスをして〜
(颯に電話しなきゃ……英玲奈さんに薬を飲まされる前に……)
私は、保管室の扉から数歩、後退りしてから、震える手で、ポケットからスマホを取り出そうとする。ゆっくりとポケットの中でスマホを握りしめてから取り出したが、カタカタと震えた手から、呆気なくスマホは、すり抜け、床に向かって落ちていく。
咄嗟に掌で掬おうとしたが、ゆっくりとスローモーションみたいに落ちていく。
無機質な廊下に、カチャンと鳴り響いた音に、慌てて、スマホを拾い上げると同時に、保管室から、麗夜が出てくるのが見えた。
「待てっ!まさか、今の話聞いてたのかっ!」
「……し、知らない」
小さく首を振りながら、私は駆け出していた。
颯に伝えなきゃいけない。
早く颯に電話して、この事をーーーー。
咄嗟に目についた非常階段の扉を開け、階段を駆け降りようと手すりに手をかけたが、その手を後ろからきた、麗夜に容赦なく掴み上げられる。
「きゃっ……やだっ!離してっ」
「悪いが、しばらくコトが、終わるまで専務室に来てもらう。颯が眠るまで」
「そんな事、絶対させないからっ!」
私は、麗夜の藍色の瞳を睨み上げた。颯は、私が、絶対守ってみせる。私は、掴み上げられていない、スマホを握っている方の親指で、颯をタップしようとする。
「やめろっ!」
麗夜が、掴み上げていた手を離すと、私のスマホへと手を伸ばす。
私は、思い切り、麗夜を突き飛ばした。
「来ないでっ!……きゃっ……」
その瞬間、体がふわりと浮いて、ゆっくり、一つ下の階の踊り場が見える。
重力に沿って、身体がバランスを崩したまま落ちていく。
そして、あっという間に視界が真っ暗になった。
ーーーー颯。