続・23時のシンデレラ〜甘い意地悪なキスをして〜
ーーーー夢を見ていた。

小さい頃、よく、寝る前にお母さんに読んでもらったシンデレラの絵本。

淡いブルーのドレスを着たシンデレラが、背の高い王子様に屈んでもらって、ガラスの靴を履かせてもらうシーンが、大好きで、何度も繰り返し読んでもらった事を思い出す。

ずっと私は、シンデレラに憧れていたけど、シンデレラになんてなれる訳ないと思ってた。

手を伸ばしても、誰もその手を掴んで、なんてくれる訳なくて。

お父さんとお母さんが居なくなってからは、
いつも、いつも、独りぼっちだった。
寂しくて不安で、怖かった……。


ーーーー美弥。

誰かが、私の名を呼ぶ。少し高めの甘い声。その声は、優しくて、あったかくて、ほっとする。

『どこ?』

辺りを見渡すけれど、暗くて、その人のいる場所がわからない。私は、その人の声が聞こえてくる方に向かって、懸命に手を伸ばすが、触れられない。

顔が見えない。
わからない。
それでも、私は、より遠くへ手を伸ばす。

『離さないで……』

早くこの手を掴んで欲しい。抱きしめて欲しい。大丈夫だよって言って……。


ーーーー颯。
< 123 / 262 >

この作品をシェア

pagetop