続・23時のシンデレラ〜甘い意地悪なキスをして〜
「……美弥、大事な事だから聞くけど、何で階段から落ちた?」

颯が、私から体を離すと、泣いてる子供を宥めるような、優しい声でそう訊ねた。

「あ……ちょっと慌てて、階段を踏み外したの」

「んな訳ねぇだろ?」

颯が、(おもむろ)に、病室の扉をじっと見つめた。

「颯?」

そして、そのまま扉に向かって声をかける。

「おい、聞いたかよ、入ってこいよ」

颯の声と共に、扉が開くと、やや俯きがちの麗夜が、入ってくる。その綺麗な顔には、誰かに殴られたような傷が、できていた。

「颯っ、殴ったの?!」 

「うるせ。一発で勘弁してやっただけ、マシだろうが。なぁ、麗夜?」

「そうだな……。今回の事は、殴られて当然だと思ってる。悪かった……」

あのプライドの高い麗夜が、長身を折り畳むようにして、頭を下げていた。

「あっ、麗夜さんのせいじゃないです!私が、ちょっと階段踏み外したせいなんで」

「美弥っ」

「いいのっ、だってホントだもん」

いつもだったら、この辺りで何だかんだ折れてくれる、颯の表情は険しい。
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