続・23時のシンデレラ〜甘い意地悪なキスをして〜
昨日は、ほとんど一睡も出来なかった。

美弥のいない家が、こんなにも苦痛で寂しいことを俺は、身をもって経験した。

(何処に居んだよ)

あの後、千歳から真夜中に連絡があったが、美弥は、都内のホテル、漫才喫茶には、来ておらず、今後、もし美弥が、来たら俺に直接連絡するよう千歳が、宿泊施設に伝言を残してくれたが、結局、何処からもかかって来なかった。

俺は、スーツのジャケットから、一枚の写真を取り出す。

「ちっちぇな……」

写真には、黒く写った子宮の中に、白い小さな卵が見える。

俺と美弥に元に来てくれた新しい命だ。

昨日、都内の産婦人科を片っ端から電話した俺は、駅前のレディースクリニックで、美弥の名前を告げた際、受付の女性に反応があった為、慌てて向かった。

そこで、美弥の写真と個人情報を開示し、美弥の婚約者という事で、何とかエコー写真を手に入れる事ができた。美弥は、もうすぐ、妊娠3カ月に入るとの事だった。つわりがあるが、お腹の赤ちゃんは順調に育っているとのことで、心から安堵した。

「父親か……」

正直、あんな父親しか居ない俺には、父親像が全く思い浮かびもしなければ、どうやって育てたらいいのかも分からない。

でも、父親として、この小さな命を一生かけて、守って愛せる自信だけはある。

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