続・23時のシンデレラ〜甘い意地悪なキスをして〜
ーーーーコンコン。

「はい」

扉が開くと共に、難しい顔をした実花子が入ってくる。

「颯、出勤早かったのね」

「あぁ、家居ても、じっとしてらんなくてさ……仕事もほったらかしにはできねぇし。昨日は、ごめん。助かった」

実花子は、小さく首を振った。

「颯、社長の動向について調べてみたの。ほとんどが、得意先の社長との会合やゴルフだったけど、一人だけ、そうじゃない人が居たの」

実花子が、写真と共に、ある人物の調査書類を俺のデスクに広げた。思わず、その人物の写真を見て、俺は固まった。

(この男……確か親父と……)

「……本来こんなことしたら、クビが飛ぶけど、社長のパソコンから少し調べさせてもらったの。時間がなくて、それしか持ち出せなかったんだけど……」

確かに、こんな事が親父にバレたら実花子は、懲戒解雇されるだろう。

「こんなことさせて悪かったな。でも何があっても、俺が実花子をクビにはさせないし、親父には、俺の指示だと言ってくれて構わない」

実花子が、クスッと笑う。

「ありがと。でも、当然覚悟はできてるから……それよりも、その人物の名前、颯知ってた?」

「いや、名前は知らなかった。ただ、一度だけ親父と一緒のところを見たことがある。綾乃和志(あやのかずし)……美弥の養父か……」

確か、親父と一緒に喫茶店に入って行った、白髪混じりの男が、この男だった筈だ。
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